過去の作品

Rolly free

遠藤勇太 Yuta Endo
[工芸コース]

茂木健一郎 評
最初はただのオートバイが置いてあると思ってスルーしようとしたのだけれど、何か引っかかりました。本人に聞いたら、自分でつくっていると言っていたの で、馬鹿な奴だなぁと思いました(笑)。これ、パーツとかも自分で金型切り出して加工したり、自分で型式認定を受けてナンバープレートつけて公道を走って いるらしいのです。僕が好きな話で、あのマルセル・デュシャンのレディメイドの男性便器、つまり『泉』は、実はデュシャン本人が自分でつくったという説が あるのです。それに対してデュシャンの友達が、買うところを見ていたという証言をしたりしてね。オートバイというのは既製品の最たるもので、もし自作しよ うとしたら、明らかに自分がつくったということを知らしめるために、奇抜なデザインにしたりするわけでしょう。いかにも俺がつくりましたよみたいに。これ はどう見ても、そこら辺にありそうというか、あまりデザインされすぎてない。でも、あえてそれを自分でつくっているところに、いろんな文脈が入り込みうる ところを突いている。壮大な愚行というのかな、誰もやろうと思わないことをやるというか。まだ大きなスケールではないし、技術的に優れたものでもないけれ ど、若者らしい夢を感じさせたので、僕は素直に惹かれました。

(2006年度 卒展プライズ受賞作品)