- | エピソード1 | 鈴木恵美 ・なぎ
- チカチカ カモシカ キレイナ トリガ
家の前に川が流れていた。住宅地に流れる川。
今は埋め立てられてきれいな緑道となった。
家の横には小さな赤いお稲荷さんが建っていて、夕方になればチカチカと薄暗い外灯がつく。
子どもの私にとってそれはそれは不気味だった。
毎年夏になるとその川には蛍が飛び交い、またある年の秋には部屋の窓のすぐそこを突然、カモシカが通って行ったこともあった。
そして一度だけ私は見た。
脚がすうっと長く、細く、とても鮮やかな黄緑色をしたきれいな鳥が一羽、川辺に佇んでいるのを。
それは一瞬だった。
その鳥の周りだけ時間の流れがちがうような、別の世界のものを見たような。
そんな不思議な感覚だったのを覚えている。
チカチカ カモシカ キレイナ トリガ
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