- エピソード3 | 大泉祥子・まほ
- とーんと、とーんとむかし。
盛岡という土地にも神様がいた。
神様はこの土地とこの土地の石がえらく気に入って、石をどかどか置いて、ぐうすか眠りこけた。
草や木は生い茂り、神様の姿は見えなくなった。
この土地の人間と動物は「ほうほうひいほうひいほうほう」と話し寄り添って生きていた。
そこへ一匹の鬼がだんすこだんだんすこだんとやって来て、野山ではピーピー鳴いている鳥をガブリ。
川ではそよそよ泳いでいる魚をゴブリ。
暮らしはめちゃくちゃ。
人間と動物は相談し合った。
そして、まずは気の強い人間が鬼退治に行った。
熊も行った、狼も行った、鹿も行った、猿も行った。
待っても待っても帰って来る者はいなかった。
そこで、ぐうすか寝ている神様に「ぱんぱん、ぱんぱん」と何度も拝むと神様が現れた。
鬼のことを言うと神様は天地がひっくり返るかの立ち合いをした。
息を呑んで見守っていると「あちょい、あちょいちょい」とおどけた調子で声をかけた。
「あちょい、あちょいちょい」鬼の可笑しな格好にみんな、わはは、わははははと大笑い。
散々笑われた鬼はポロポロと涙を流し「俺はこの土地が好きだ。だがもう戻っては来ない。」と約束のしるしに岩に手形を残した。
この鬼の手形から災いが二度と来ないめでたい地名「岩手」と名がついた。
ドントハレ
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