エピソード4 | 川口千春・まなと
「パンパン」
うちの家にじいちゃんが作ったお稲荷さんがあるんだけんど、あたしのちいちゃい頃は毎朝、仏様拝んでその後にお稲荷さんさ水とかごはんとか、「ぱんぱん」手を叩いで拝むっていうのが当たり前のことなんだっけ。
で15日っていうとお稲荷さんの日で油揚げとか酒とかあげるっけから、赤い社のとこさあげてこいって言われっと、お稲荷さんの顔見えて、おっかねえなあって思うこともあったんどす。
うちさあお稲荷さんが来たのはひいじいちゃんの時で、ある家の人が訳あってお稲荷さんば置いてどっかさ行ってしまったんだと。
それで野ざらしになってかわいそうだあと思ったひいじいちゃんが、うちさ貰ってきて大事にしてたんだけども、一度お稲荷さんは京都の伏見稲荷さ返したらいいんでかなってなったことがあったんだと。
でもその時お参りしてもらったらお稲荷さんが出てきて「京都さ返さねでけろ、あっちさ行っても偉いお稲荷さんばっかりで住まっこさいらんねえ、どうかここさ置いてけろ、この家ば守っから。」って言ったんだって。
今でも家に帰ると「ぱんぱん」てばばちゃんが手を合わせてお稲荷さんさお参りしている姿を見ることがあって「いつも守ってもらってありがとうございます。今日も1日どうかお守りください。」っていう姿を私はずっと小さい頃から見てきたんだなあって。
「パンパン」
川村回想| 川口さんのおじいさんの家に伝わるエピソード。ひいおじいさんの写真をお借りして仮面を制作したかったのですが、さすがにそれは残っていなかったので、晩年そっくりだったというおじいさんの写真を見て仮面を制作。文章から滲み出るおかしさを強調したかったので、おいなりさんは漫才師風のキャラクターにしました。川口さんの方言を使ったノリノリの語りが印象的でした。しかし、おいなりさんが家においてほしいって、一体どんな感じで頼むんだろうか?