- エピソード10 | 西尾優美・かりん
- バババババッ ゴロゴロゴロ オヒャラドンガ
私が住んでいた河北町の谷内っていうところでは、毎年九月に「どんが祭り」っていうお祭りをするんだ。
小学校三年生以上になると、囃子屋台っていうのに参加できるんだ。
おっきいトラックの荷台に舞台を載せてその上でお囃子をするんだよ。
それでね、私が小学校六年生のときだったかな。
屋台のうえで笛を吹いていたらいいお天気だったのにだんだん空がどんより暗くなってきて、もやっとしたぬるーい空気のにおいがして「あ、雨のにおいがするな」て思ったの。
そしたらあっというまに土砂降りになっちゃったんだ。
屋根の上にすごい勢いでバババババッて雨粒がたたきつけるみたに振ってきて、山の方からはゴロゴロゴロって雷の音が聞こえる。
「うわあ怖いねー」なんてともだちと話をしていたら、屋台にのっていたおじさんが「松橋さ竜神さんいだがらな雨はしょうがないんだ」て言ったんだ。
松橋には竜の姿をした水の神様の神社があって、「ああ お祭りやってるな楽しそうだな」て見にきてるんだって。
そんな話を聞いて「そうなんだ竜ってかっこいいだろうな」なんて思っていたら、さっきの土砂降りが嘘みたいにケロッと晴れてお日様が出てきたの。
「わあっやっぱり竜神様遊びに来てたのかな」なんてドキドキしてちょっとうれしくなったんだ。
バババババッ ゴロゴロゴロ オヒャラドンガ
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