エピソード11 | 山口美文・ゆいな
ヒヒーン
子供のころ毎年行っていたスキー場があった。
スキーシーズンも終わりかけの暖かくなってきたとき、いつものようにゲレンデをスキーで滑り下り、
ふうっと一息ついたとき「ヒヒーン」という馬の嘶きが聞こえたようなきがしてびっくりして振り返ってみると、雪が解けて見え始めた土の黒いところが馬の頭のような形に見えて「あ、馬みたい」と思ったの。
その年の夏、そのスキー場に遊びに行ったときゲレンデの端のほうに何か案内板のようなものがあって、「雪が馬の形に溶け始める年は何かいいことがあるよ」って書かれてあったの。
スキーをしていたときに聞こえた「ヒヒーン」という馬の嘶きは、何かいいことがあるよって馬が教えてくれたのかな。
ヒヒーン
川村回想| 真っ白な雪山の上からスキーヤーが滑り、山の中からは馬の頭が浮かび上がる。「あれ?なんだろう?」とぼんやりしてしまう影絵を作ろうと思い、複数台のライトを使って2つのシーンを同時に投影しました。機械仕掛けのように、延々と滑り続けるスキーヤーの人形は、学生スタッフたちが3人がかりで動かしていました。スクリーン裏でぐるぐると縁を描いて人形を動かしている彼女たちを見ると、まるで踊りを踊っているようでした。