- エピソード14 | 杉山真希・かんたろう
- カラカラカラー、トントン
カラカラカラー、トントン
私が昔、機織りをしていた頃のおはなし。
ある春の日、養蚕農家に手伝いに行った。
たまごからかえった蚕は、脱皮を繰り返しながら桑の葉をたくさん食べる。
その音は、ザワザワザワー、ガサガサガサ、ザワザワザワー、まるで雨が降る音のよう。
ぐんぐん大きくなってまんまるになった蚕は、ある日ピタリと桑の葉を食べなくなり体全体が少し飴色がかってくる。
そうなったら繭をつくるための仕切りに入れてあげる。
作業を終え家に帰り鞄を開けると、一頭の蚕さまが迷い込んでいた。
私は小さな蔟をつくった。
蚕はその一部屋に入り、糸を吐き始めた。
繭の中の蚕は、ひっそりと蛹に姿を変え、ある日ふ化して繭から外の世界に出てきた。
飛ぶことのないその真っ白な蛾は、数日してその一生を終えた。
あとに残った繭をほそーいほそーい糸にして、その時織っていた着尺にそっと織り込んだ。
カラカラカラー、トントン
カラカラカラー、トントン
金色に輝く15メートルの布。
その中に、ひときわ強く輝く一筋があった
カラカラカラートントン
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