エピソード15 | 李留美・みさと
コンコント
子どものころ住んでた家の近くに崖があって、その下に清水が流れてたんだよ。
清水は、岩と岩の間からひんやーり冷たくて、きれいな水がコンコンと湧き出てたんだよ。
小学校の帰り道、友達と喉が渇くと清水によって、冷たい水をゴクゴクゴクゴク飲んで、花や草をとったり、水面から頭を出している石をピョンピョンピョンって跳んだりして遊んだんだよ。
当時は水を汲みに来る人や、セリを取りに来る人がいて、夏にはマスつかみ大会があって、みんなで楽しんでいたんだよ。
でも今清水はね、木や草がうっそうと茂って入ることが難しくて、その存在を知らない人が気が付かないで通り過ぎちゃうような場所になっているの。
あそこには、子どものころ、友達と家族とこの土地のみんなと過ごした、とっても素敵な場所があるんだよ。
コンコント
川村回想| 母たちのお話を繰り返し読んでいるうちに感じたのは「かつてあって今はないもの」。冒頭の【チカチカカモシカキレイナトリガ】と最後の【コンコント】は、時も場所も違う体験ですが、ともに失われた「川」を慈しんでいました。本編は最後に、影絵の中から母たちが手招きし、呼ばれた子供達が影の中へ帰って行くシーンで終わります。どのような感情を持つシーンになるのか、やってみるまで僕にも想像がつきませんでした。当日のリハーサルで試してみると、エピソードの持つ物悲しさとは裏腹に、手招きする母たちの影と、それに誘われて歩き出す子供達の姿は、強く優しい前向きなエネルギーでいっぱいでした。 スクリーン裏でそれをみていた僕は、不覚にも感動してしまい、うまく唄えなくなったのを覚えています。