草を かき分けて 駆けていく 束縛されることもなく ただ かき分けていくと 私たちの前に 道は無い 野を行け 道が無ければ もっと かき分けるのさ 草を
(12:59- 2016年9月18日)
青空に追われて 走ろう 背中にそっと 触れた何か 振り向けば 誰もいない だけどまた 追われている気がして 走る 背中に乗った 決して重たくはない 世界の感触 ああ これが 雲の 足跡なのか
(13:01- 2016年9月18日)
木のざわめき 風の足あと こもれびさがす 鳥のさえずり あなたのことを想っています そんなに強がることはない 大きな木でも 小さな木でも もたれかかるといい どんなに遠く離れていても そこが あなたのふるさと しばらく涙を流すといい
(13:25- 2016年9月18日)
山形 文翔館 庭にて 木の下で ノートパソコンで 詩を書いていたら 木の実が 落ちて来ました 話しかけてきて くれた
(13:28- 2016年9月18日)
宇宙は すぐ そばにある 詩ト詩ト歩ク
(13:31- 2016年9月18日)
立ち止まると 雲のあしあと
(13:34- 2016年9月18日)
立ち止まると 雲の街
(13:35- 2016年9月18日)
森 という字 と似ている 木
(13:35- 2016年9月18日)
落し物があるのだとしたら ふるさと
(13:51- 2016年9月18日)
あなたに しとしと 話したいことがある
(13:52- 2016年9月18日)
小さな石ころが こつこつと話しかけてくる あなたの悲しみは そのままに 怒りは そのままに 寂しさは そのままに 拳や 涙や うつむく日々は みな 明日の あなたを 目覚めさせる 迷わずに 石ころの転がるままに
(14:25- 2016年9月18日)
しとしとと 雨が わたしと あなたの ふるさとに 降っています 空に 雲に 野原に 街に 駅に 誰もいない家 の屋根に
(14:25- 2016年9月18日)
あなたの名は 革命をもたらすために 名づけられたのです そして わたしの名も ほら 空と雲が 変わった 雨が 強くなるだろう しとしと しとしと
(14:26- 2016年9月18日)
生きているという たった一つの絶対を前に 私たちは息をしている 宇宙の真ん中で 震えている
(14:26- 2016年9月18日)
いま 心のなかは こんなふうに しずか
(14:36- 2016年9月18日)
旅を旅するのさ 山形
(14:39- 2016年9月18日)
本当の想い
(14:44- 2016年9月18日)
あたりまえでなくていい さくらんぼ
(14:48- 2016年9月18日)
しとしと降るもの 降らないもの
(14:51- 2016年9月18日)
たとえばきみ 靴を片方 無くしてしまったのなら もう片方の靴は 胸に抱えて 裸足になって 丘の上まで 駆けていこう 何を 無くしてしまったのか 本当の意味を 抱きしめるようにして
(16:00- 2016年9月18日)
さあ 何かを始めなくてはならない 風が吹くのを待つのではない きみが風そのものになりたまえ 夢があるのなら この街で育てていくのだ きみの手の中にしか きみの夢はない きみの種子はない きみの足元にしか きみを育てる大地はない 地下を行く水のささやきは きみにしか聞こえない
(16:02- 2016年9月18日)
きみと ともに この世界に 生きてあることの 希望 この街で暮らすこと 夢を持つこと 信じること きみは一本の草 きみはコオロギの鳴き声 きみは秋の山形 きみは宇宙の果てを信じる人
(16:04- 2016年9月18日)
木々のざわめきと落ちる実 子どもたちの優しい髪の分かれ目 静かな公園の水道の蛇口 きみの立っている場所は いつも 世界の先端だ だから 握りしめるのだ 拳を 蹴るのだ 地面を 飛ぶのだ 心を 山形の街の空を
(16:11- 2016年9月18日)
いくつかの独楽が静かに記憶の中で回り続けているかのようにしとしとと降る午後の雨だ
(16:13- 2016年9月18日)
あなたのなみだをわたしはわすれない わたしのなみだをあなたにしってほしい わたしはなんどでもわたしにうまれかわってみせる あなたはなんどでもあなたにうまれかわってほしい
(16:16- 2016年9月18日)
おもうままにまちをあるく しとしとと
(16:39- 2016年9月18日)
しとしと降る雨の夕方にはかならず忘れ物があります
(16:48- 2016年9月18日)
しとしと降る雨と揺れる秋
(16:55- 2016年9月18日)
雨の受け皿 山形八日町
(16:55- 2016年9月18日)
雨宿り ほんとうの ともだち
(17:01- 2016年9月18日)
言葉にも明かりがある
(17:02- 2016年9月18日)
どうしても言えなかったことがあるんだそれを伝えたいと思って今までを生きてきたのだけれどはっきりと分かった言えなかったことが僕の心の中でずっと生き続けていていつかきみに想いを届ける日まで心の奥で息をしていたこと
(18:08- 2016年9月18日)
一つのささやきが 一つのささやきをもたらす 一つの忠告が 一つの忠告をもたらす 一つの叫びが 一つの叫びをもたらす 一つの優しい言葉が 一つの優しさをもたらす こんなふうに一日は 一日を連れてくる 夜が更けていく さらなる夜
(18:11- 2016年9月18日)
ポケットの中に 何かを入れたまま 忘れている そしらぬふりで 次の日には 別のジャケットや ジーンズや シャツを選ぶ しばらくたって そこに 手を入れて 思い出すのだ 何を忘れようとしていたのか その時 ふと淋しくなる
(18:16- 2016年9月18日)
木のざわめき 風の足あと こもれびさがす 鳥のさえずり あなたのことを想っています そんなに強がることはない 大きな木でも 小さな木でも もたれかかるといい どんなに遠く離れていても そこが あなたのふるさと さあ涙を流したらいい
(18:30- 2016年9月18日)
たどりつきたいと思いました 天と地のすずしいまなざしに 詩ト詩ト歩ク
(22:18- 2016年9月18日)
きみの まなざす先には 水平線がある それは 真っ直ぐな線を描き この世界を 二分するだろう だけど 分かって欲しい それは見せかけだということを
(22:19- 2016年9月18日)
帰ることの 出来ない 故郷を想って 涙を流している人がいます きみは それを知っていますか きみは何のために生まれて来たのでしょうか つまらない世間話に 相槌を打つために きみは生まれて来たか ならば ともに 世界へ 本当の 相槌をしてみようでは ありませんか
(22:20- 2016年9月18日)
しとしと あめが ずっと ふりつづけていた いちにちだったけれど あなたのこころが ざわめく ことばのように つたわってきて わたしは かさをさして あなたと ほほえむことができて よかった しとしと
(22:21- 2016年9月18日)
はなしに みみをかたむけてくれる それだけで あしたも がんばろうとおもうのです あなたのまなざし えがお よこがお みあげている そらのどこかに わたしたちの しずかな いちにちの おわりが それがあるのな
(22:22- 2016年9月18日)
朝がある あなたの目覚めに 交わした目くばせに さえずる鳥に 子どもの笑い声に 手にした新聞紙に 湧きあがる心に 朝が 一杯の珈琲に
(7:12- 2016年9月22日)
あどけない あなたの影が 誰もいない道を歩き あなたを探して 枕元で こうささやきます 世界はもう 驚くほどに 目覚めている ほら あなたも そろそろ
(7:18- 2016年9月22日)
あなたは まだ しらないだけ あなたは ねむりのなかで みみをすましている きのうのよるのつづきを だけど めをあけてごらん きのうはもう ながれぼしとともに ほしのかなたへ きえていった めをあけてごらん
(7:21- 2016年9月22日)
流れ星
(7:21- 2016年9月22日)
あなたのみみには おんがくのよかんがある しずけさのなかを はりめぐらされた ほそいいとの つよさときらめきのなかで すこしずつ とりがさえずり かぜがふき まちにあしあとがきこえ くもがざわめき しじんがあくびをする とりのはねがまう せかいが こうきょうする よかん
(7:24- 2016年9月22日)
予感
(7:24- 2016年9月22日)
あなたは 自分を あきらめてはいないか もう無理だ たかをくくっては いないか 眠らせてしまって そのまま 次の朝に いたずらに 目を覚まそうとしてはいないか あなたは 本当の目覚めを生きているのか あなたはあなたを 飼いならそうとしているだけではないのか あなたという獣よ
(7:28- 2016年9月22日)
燃えあがる宇宙の真中の柱が山形にある
(7:31- 2016年9月22日)
宇宙へと終わらない問いを求めるのなら軽やかにステップを踏みながら朝の街を歩いてみるといい誰もいない街路に一つ一つの新しい歌の秘密がざわめくさざ波のようになってあなたの心を洗うだろうその時だわたしたちはいまここに浮かんでいる水際に忘れ去られた夏の浮輪です
(7:36- 2016年9月22日)
誰もいない 誰かがいない
(7:37- 2016年9月22日)
誰かがいない かくれんぼの鬼しかいない
(7:38- 2016年9月22日)
足だけが先に歩いている 遠くの丘に 静かな碑が立っている 陽の光が照らしているのは 脱皮したばかりの ノコギリクワガタの複眼でしかない
(7:39- 2016年9月22日)
新聞紙の上でサングラスを分解して新しい計画を立てよう 背中の羽根が激しく暴れるから白い馬は真っ黒くなった 難しい話ばかりしているから 木々はざわめき沈黙は髪を束ねる
(7:40- 2016年9月22日)
誰もいない街 日本
(7:40- 2016年9月22日)
肉体の内部で城の門が倒れていて 暗くなった地球の反対側を想う 空に名前を奪われたまま 虹色の空き缶が倒れて 黒い羽根が 突き刺さっているから やはり来たのだと分かる
(7:41- 2016年9月22日)
私たちは足あとをかき消さなくてはならない 深いところから こみあがってくる 豪雨の理由も 天を仰ぎ それでもまだ 鳥の影などひとつもないことも
(7:42- 2016年9月22日)
届けてほしいものがあります ふるさと
(7:42- 2016年9月22日)
ひとかけらのパンと 鮮やかなサラダが あなたの内側に 静かな雨と光を降らせるかのように やさしい声が 今朝もキッチンにあふれているね 一杯のコーヒーに 空や風や雲の表情を知る それからのほうがいい 窓を大きく開くのは
(7:47- 2016年9月22日)
振り向くと 静かに笑っている 街の屋根 を統べる 風
(8:10- 2016年9月22日)
まず 記憶に花が咲いてから目覚める
(8:13- 2016年9月22日)
秋の入り口 霞城
(8:19- 2016年9月22日)
記憶の中で揺れるもの 記憶の中で揺らされているもの
(8:24- 2016年9月22日)
記憶という名の球場で白球が豪速で
(8:26- 2016年9月22日)
この先にあるのなら それは秋
(8:27- 2016年9月22日)
無数の よろしくお願いします の声が 座っている スタンド席 静かな緑
(8:30- 2016年9月22日)
選手宣誓 秋が並ぶ
(8:31- 2016年9月22日)
ある日 わたしたちは 大きなグランドで 何かを持てあまして しまったのだ 投げても届かない 振っても当たらない バットを構えても ピッチャーがいない たとえ打ったとしても ファールボールばかり それでもまた続けるのか 悲しい野球を 日本よ 磨いたばかりの白球を 投げよ
(8:40- 2016年9月22日)
グローブにおさまるボールの音 秋のあしあと
(8:42- 2016年9月22日)
ボオルをほおりなげるとしずかにしあいがはじまるやさしいかけごえだこのグランドにクリーンヒットのおとがひびきわたるときにあなたはめざめているはるかなまちでくらすあなたにこのやまがたのそらのつぶやきをつたえたいわたしはいきていますあなたとおなじこのじだいをこのくにをこのいまをきぼうを
(8:46- 2016年9月22日)
大きなホームランを打った記憶を胸に生きていくといい
(8:10- 2016年9月22日)
ファアルボウルだ 難しい球を打ちたいと思っていると 必ず 外れてしまう わたしの人生など このようなことの連続だ だけど 三級三振よりは いいかもしれない また ファウルボウル いや 美しい三振もある 胸の奥で 誰かがが わたしの声で呟く
(8:53- 2016年9月22日)
記憶を守る息の調べ
(9:17- 2016年9月22日)
石の波 硬い波 思念 馬見ヶ崎川
(9:29- 2016年9月22日)
里芋 牛肉 醤油汁 空 雲 風の音 煮込む
(9:31- 2016年9月22日)
みずぎわにおとずれるうつくしいそらのうらぎり
(9:34- 2016年9月22日)
よごしよごされわたしはいきる
(9:36- 2016年9月22日)
興味などひとつもないところに興味の源泉がある
(9:37- 2016年9月22日)
おまえは 何に激怒するか 激怒に向かって 静かに問い 涙を禁じえない おれを おれは憎悪する
(9:40- 2016年9月22日)
あなたは目覚めるだろう 河の音がするだろう 耳を洗う水の調べは あなたに何を語ろうとしているのか 誰だって生きていたい だけど 誰だって死の淵にいる
(9:47- 2016年9月22日)
あなたは目覚めるだろう 河の音がするだろう 水はそっとささやく あなたの本当のこころは この調べのさきにある あなたはまだ 目覚めていない 生まれていない
(9:48- 2016年9月22日)
あなたは目覚めるだろう 河の音がするだろう 水は軽々と 朝日を浴びて 語りかけてくる あなたの本当の人生は この先にある あなたはまだ それに気づいていない
(9:50- 2016年9月22日)
あなたは目覚めるだろう 河の音がするだろう 水は微笑むようにして流れていく あなたの生き方は 満たされているまま そのもの しかし あなたが本当に欲しいものは この先にある
(9:52- 2016年9月22日)
あなたは目覚めるだろう 河の音がするだろう 風も雨もあなたを痛めつけ この街から追放するかのように 吹きつける 降りつける 水は牙を剥くように ごうごうと流れる あなたは叫ぶ 水の先に 本当にわたしの人生はあるのか あるのだ 嵐の先に あなたの 本当の命が ごうごうと 生きよ
(9:56- 2016年9月22日)
生きる
(9:58- 2016年9月22日)
ごうごうと山形
(9:59- 2016年9月22日)
フリスビーに乗り 秋が飛ぶ
(10:00- 2016年9月22日)
背中の羽根が激しく暴れるから白い馬は真っ黒くなった 難しい話ばかりしているから 木々はざわめき沈黙は髪を束ねた
(10:19- 2016年9月22日)
静かに息をしながら樹木は髪を逆立たせて人になる 黒い羽根が落ちているから ここにも来たのだと分かった
(10:20- 2016年9月22日)
空に名前を奪われたまま 虹色の空 私たちは足あとをかき消さなくてはならない 深いところから こみあがってくる 豪雨の理由も 天を仰ぎ それでもまだ 鳥の影などひとつもないことも
(10:20- 2016年9月22日)
宛先のない 手紙を巣の真ん中にとらえて 風に晒している 生涯の深い底から 手という言辞の与えられない手が 無数にたちあがり
白い封筒をとらえようと 指を伸ばす
それを静かに眺める 薔薇の藪
(10:21- 2016年9月22日)
何の翻訳もされていない風が陸橋を歩くから
紫色の手押し車で眠る河が
静かに脱輪していくのが分かる
あなたを想っている 髪が流れる
(10:22- 2016年9月22日)
草むらに ほうり投げた ボオル まだ 見つからない 48歳になっても
(10:24- 2016年9月22日)
ぜんそくのひどい 子どもだった 祖母に連れられて 病院に行き お医者さんに 注射ですと言われると 泣き出して 逃げてしまうわたしだった 祖母が慌てて 追いかけてくる わたしは 診察室を抜け出したあと 急に行く場所がなくなり ただ 追いかけてくるのを待った 心配な顔で 追う祖母を
(10:27- 2016年9月22日)
閉館した 夜の図書館にて たたずむ わたしたち 本当に話したいことは 言葉にできない それは言葉の内側にあるのだろうか 外側にあるのだろうか 闇の中にあるのだろうか ともあれ わたしたちは 夜の暗さに震ている 孤独に震えている
(20:09- 2016年9月24日)
閉館した 夜の図書館にて いま わたしは 心の震えを停めることが出来ない 出来るだけ 冷静に ときには 笑みを浮かべたりして 語り続けるしかない ほんとうは 頼りなくて 情けなくて 震えているのです 暗闇で
(20:10- 2016年9月24日)
閉館した 夜の図書館にて わたしは 臆病になります だって ほんとうは 言葉に出来ないことに わたしたちは 向き合っている それなのに たくさんの言葉を わたしたち 真ん中に 置くことでしか 見つめ合うことはできない 夜の闇は深くなるばかり
(20:11- 2016年9月24日)
ああ 「闇」 最初に そう名付けた人は 誰なのですか 教えてほしい なぜ「夜」なのですか なぜ「闇」なのですか わたしたちは 震えるしかないのですか
(20:14- 2016年9月24日)
夜よ 闇よ 震わそうとするのであれば 伝わらない苦しさこそを わたしたちは 閉館した図書館で それでも 震えながら 共にここに 在ろうとする この 隣り合う確かさこそを
(20:15- 2016年9月24日)
手を「手」と名付けようとした誰かが手と指で「手」という文字を紙に記したとき「手」は手となり得たのだろうか 手は「手」とそれを行き来しもはやただ開かれるしかなかったのだろうか このとき「手」から逃げていった手をてのひらに夢想し拳を握ってみるのだ 暗い闇にて
(20:17- 2016年9月24日)
閉館した 夜の図書館にて わたしたちは 暗闇を手探りするしかあるまい 夜の底は果てしない 手が指が獣のように求めるのは 「手」「指」 からこぼれ落ちるもの 本を借りたいのです 虹色のハードカバーの一冊をお願いいたします 返却はできないかもしれません
(20:18- 2016年9月24日)
暗闇のわたしたちに 去来するもの 「悲しみ」からこぼれ落ちる悲しみ 「孤独」からこぼれ落ちる孤独 「怒り」からこぼれ落ちる怒り 「愛」からこぼれ落ちる愛 「指」からこぼれ落ちる指 そこからこぼれ落ちるわたし 震えながら 手をつなごう
(20:21- 2016年9月24日)
あなたは ほんとうのあなたではない だって あなたは あなたよりも あなたなのです
(20:23- 2016年9月24日)
夜の図書館という 書物の迷宮の闇にて 果てしなく どこまでも 暗い 井戸のような黒色の深さに まぎれて 本を掴もうとする その「手」は 手を失ったまま わたしたちの手元にある
(20:25- 2016年9月24日)
手は手を失ったままわたしたちの手元に 指は指を失ったままわたしたちの指先に
(20:27- 2016年9月24日)
言葉にならないものの闇は深い もはや書物の文字は すべて虚偽なのだ 一冊ずつ 手にとってみたまえ どの本も どの本も たったいま どの頁も 空白となっているだろう
(20:28- 2016年9月24日)
書物の棚の前に 立ってみたまえ それぞれの空白を それぞれの頁に挟みこみ 美しく整然と並ぶ あらゆる無 書物という故郷を喪ったまま それでも文字は 床を這い 呼吸する ほら 忌まわしい執念の吐息が 闇の中に聞こえるはず
(20:30- 2016年9月24日)
閉館した 夜の図書館にて 空白の書物が 書棚に整列している 想像してみたまえ 言葉にならないものばかりが 書物にはさまれている このときを 書架の闇 床を這うのは黒い夜
(20:31- 2016年9月24日)
わたしたちは 闇の底で もはや わたしたちに質問する なぜ生きる 何を信ずる 何を悲しむ 何を求める 何を愛する 問い続ける その言葉も 「問い」からこぼれ落ちていく 絶対的質問の闇 その恐怖
(20:32- 2016年9月24日)
絶対的質問の闇 答えられないから わたしたちは 闇のただなかで 光に憧れるしかない 今はじっと耐える この暗い夜の意味に 何かが変わる そんな時が きっとやってくる 東の空へと 指を 手を のばしたいのだ
(20:35- 2016年9月24日)
言葉にならないものがあるから 言葉がほしい 手をにぎろう たしかな言葉があるから 言葉にならないものが うまれていく
(20:35- 2016年9月24日)
言葉にならないものがあるから 言葉がほしい 手をにぎろう たしかな言葉があるから 言葉にならないものが うまれる それが わたしたちに 朝の沈黙をあたえます だから 祈ります 未明の空を渡る 四十数匹の 鳥たちに わたしたちは やさしく ささやきます 光に
(20:39- 2016年9月24日)
朝だ あの光る雲には 風の家がある 夜明けの木を あなたに贈ります それはまだ暗いうちから 空が明るくなることを 待ち続けて 鳥が渡ることを 見あげて 風にあなたの 安らかな眠りを訪ねて
(20:44- 2016年9月24日)
話がしたくて 野を行く風のなか 電話のベルが鳴っています 光のつぶやきが おいかけて おいかけてきます
(20:54- 2016年9月24日)
連投詩①
『詩ト詩ト歩ク/山形ノ街ノ交差点デ詩ガハジマル』
日時=9月18日[日]13:00より/9月22日[木・祝]7:00より
会場=山形市七日町界隈
連投詩②
『詩ト詩ト語ル/夜ノ図書館デ詩ノ灯リヲサガソウ』
日時=9月24日[土]20:00より
会場=山形県立図書館(遊学館)
ゲスト=池永正二(ミュージシャン/あらかじめ決められた恋人たちへ)
主催=東北芸術工科大学東北復興支援機構(TRSO)
企画=宮本武典
協力=山形県立図書館(遊学館)、山形ビエンナーレ事務局
協賛=株式会社 三越伊勢丹、日本コカ・コーラ株式会社、公益財団法人日本文化藝術財団
学生アシスタント=木藤夏希、山代森
お問い合わせ
東北芸術工科大学 地域連携推進室
〒990-9530 山形県山形市上桜田3-4-5
Tel 023-627-2091 Fax 023-627-2081
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