Movie : Tetsuya Kogure

2015年の2泊3日のキャンプから生まれた「ヘビワヘビワ」は、原発事故により居住制限が続く南相馬市小高地区に、千年前から伝わる民話「大悲山の大蛇」を、川村亘平斎と南相馬市の家族10組が現代版として新しい解釈を加えた影絵芝居。南相馬市民自らが制作した影絵人形や演舞により、故郷の誇りでもあった物語を、次代を担う子どもたちに語り継いでいくプロジェクトとなった。また、被災した同地区への鎮魂の意味を込め、2015年に山形市と福島市の福島稲荷神社境内で、2016年には「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ2016」で奉納公演がおこなわれた。

Photo : Kohei Shikama ( roku )

「大悲山大蛇物語」あらすじ

その昔、南北朝時代のころ、琵琶の名手で玉都(たまいち)という目の不自由なお坊様がいました。
玉都は、目がよくなりますようにと毎晩大悲山薬師堂で願をかけておりました。
いよいよ満願という日の夜、近くの沼の主だという大蛇が若侍にばけてあらわれ玉都の美しい琵琶の音を聴かせてもらったお礼にと、ひとつの話をしました。
それは、大蛇の夫婦は沼がせまくなったので明日から七日七晩大雨を降らし、小高郷一帯を大沼にしてしまうと、そして大蛇から竜に化身すると言いました。
そのあかつきには玉都を小高郷の殿様にし、目も見えるようにしてやろう、だが他人にこのことを言えば命はないと告げられました。
その話の一部始終をきいていた薬師堂の観音様は、へびの体を腐らせ、その魔力を失わせる「鉄の釘」をたくさんつくり、大蛇の住む沼の岩に打ちつけるようにと玉都をさとしました。
玉都は念願の目が見え、小高郷の殿様になれることに一時は心を奪われましたが、仏に仕える身であることを思い起こし、観音様の教えを小高城の殿様に知らせたのですが、その帰り道小高川の橋のところで化身した竜に命を奪われてしまったのです。
その後殿様は家来たちに「鉄の釘」をたくさんつくらせ、大悲山の蛇巻山周辺の沼の岩に釘をうち、竜を退治したのであります。
これは玉都の捨て身の進言によって、大雨の洪水からまぬがれ、たくさんの人々の命と小高郷が救われました。という物語です。

「大悲山大蛇公園」(南相馬市)の案内板より引用

| 公演暦 |

  • キッズアートキャンプ山形2015

    「ヘビワヘビワ~南相馬市小高区大悲山の大蛇伝より」
    ワークショップ=2015年8月8日[土]~10日[日]
    山形公演=2015年8月10日[月]/14:00~15:00/東北芸術工科大学こども劇場
    福島公演=2015年8月22日[土]/19:15~ 20:15/福島稲荷神社(「未来の祀りふくしま」公式プログラムとして上演)
    影絵=川村亘平斎
    出演=南相馬市民(伊藤三和さんご一家、小倉聡美さんご一家、桑折祐一さんご一家、小澤建二さんご一家、佐藤芳幸さんご一家、高野登志江さんご一家、髙橋幸江さんご一家、星臣さんご一家、山田智史さんご一家、佐藤聖一さんご一家)+学生有志(梅原もも子、遠藤百笑、奥山直、鴨田幸奈、小松大知、是恒さくら、齋藤綾子、佐藤亨、菅原葵、高木しず花、玉手りか、堤夏輝、半澤青空、目黒有貴子)
    演奏=GO ARAI、五十嵐香乃
    協力=南相馬こどものつばさ実行委員会、福興会議、菅野清二、未来の祀りふくしま実行委員会
    協賛=株式会社 三越伊勢丹、公益財団法人日本文化藝術財団

  • みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ2016

    「ヘビワヘビワ~南相馬市小高区大悲山の大蛇伝より」2016公演
    公演=2016年9月4日[日]/19:00~20:00/東北芸術工科大学7階特設劇場
    出演=川村亘平斎+南相馬市民(小澤建二さんご一家、佐藤芳幸さんご一家、星臣さんご一家)+DANCE SPACE+学生有志(遠藤百笑、菅原葵、鈴木奈央、玉手りか、廣田百羽)
    音楽=GO ARAI、五十嵐香乃
    協力=福興会議
    協賛=伊藤忠青山アートスクエア

東北影絵芝居の2作目は山形が舞台となった。「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ」市民連携プログラムとして制作・上演した「ハハハハハハハハハハハハハハハ」は、東北芸術工科大学こども芸術大学の15人の母が「我が子に語り継ぎたい」故郷の民話や幼少期の不思議な出来事を、5ヶ月間にわたるワークショップを経て、オムニバスの影絵芝居にまとめたもの。芝居に登場する「母」を模した影絵人形は、それぞれの子どもたちが描いた。影絵の幕に子どもたちが呪文で呼びかけると、「母なる山々」の影が姿をあらわし、故郷の物語を優しく語りはじめる。

Photo : Kohei Shikama ( roku )

|アーティストコメント|

山形影絵「ハハハハハハハハハハハハハハハ」は、ワークショップを通じて集めた15人の母の記憶を、編纂して作ったオムニバス影絵です。

集められた15のエピソードは、それぞれがとても興味深いもので、もうそれだけで十分すぎるほど魅力的な内容でした。別々に集めてきたエピソードの一部は、具体的にリンクしていて、その偶然にとても興奮しました。僕の役目は、それぞれのエピソードが損なわれない程度に修正すること、エピソードの配列を考えること、母達のスケッチを元に影絵を制作し、演出することでした。僕は、ほぼ1年かけてこの企画に関わらせていただき、お蔵入りになったものも合わせると、約100体の影絵人形を作りました。

山形ビエンナーレでの上演は、山の神々が集まり、それぞれの記憶を語る祭り、という形式にしました。会場は、芸工大7Fのギャラリーに竹2000本を使って組み上げられた影絵小屋です。エピソ ードを語る母たちは「山の神」。山の神を呼び出すために、子ども達は、ワークショップで作った母の影絵人形=神様の依り代をスクリーンに投影します。それから呪文を唱えると、母=山の神が語り出す、といった具合です。呪文は、母たちのエピソードにあったオノマトペや、印象的なフレ ーズから作られました。それだけ聞いたら意味のわからない、まさに呪文のような言葉たち。

母の語りをサポートし、舞台をさらに鮮やかにしてくれたのは、音楽家の田中馨くん。彼の音楽なしで、この温かな宴は完成しませんでした。ありがとう!馨くん。

そして、宮本さん、伊藤さん、芸工大学生をはじめとする山形ビエンナーレスタッフの皆様、こども芸術大学の皆さん、そして当日集まって頂いた多くのお客様に改めて感謝します。

2017年 2月26日 バリ島より 川村亘平斎

| 公演暦 |

キッズアートキャンプ山形2016

「ハハハハハハハハハハハハハハハ」
ワークショップ=5月11日[水]、6月8日[水]、7月15日[金]、8月24日[水]、9月21日[水]、9月23日[金]
公演=9月24日[土]/18:30〜19:30/ 東北芸術工科大学本館7F特設劇場
出演=川村亘平斎
こども芸術大学だいち組(鈴木恵美 ・なぎ、矢作祐美・おとは、大泉祥子・まほ、川口千春・まなと、高田悠子・ときあ、倉成敏枝・はる、佐藤藍・ふうま、野中ゆかり・たいが、會田由美子・ゆうま、西尾優美・かりん、山口美文・ゆいな、山田華子・ことみ、小泉晴香・ゆづき、杉山真希・かんたろう、李留美・みさと)
学生有志(遠藤百笑、菅原葵、鈴木奈央、玉手りか、三澤創)
音楽=田中馨
協力=東北芸術工科大学こども芸術大学
協賛=株式会社 三越伊勢丹、日本コカ・コーラ株式会社、公益財団法人日本文化藝術財団