絶えることのなく寄せては返す波は、限りない彩りのアクセントのように穏やかで慈愛に満ちているかと思うと、束の間に荒れ狂う物の怪のような咆吼を持った怒濤に変わります。人の力ではとても管理できないような優しさと力を持つ自然に接していると畏怖の念が新たに起こります。
それにつけてもいま世界で大きな問題になっている金融のみならず文化や宗教の格差から起こるテロ活動等は、人の傲慢さがそうした自然の大きさを失念してしまっている我々に降り掛かっている試練なのかなと思います。イスラム社会との確執についても、サミットやG8などを構成する先進国は、欧米主導型社会の構造や経済活動といった事象を基本的に考え直さないとますます厳しい事態が生じてくるのは避けられないでしょう。各地で起こっている戦争も、お互いに正義を唱えていますが、本来の正義とは人を殺したり盗んだりだましたりすることを戒めている概念のはずです。テレビのニュース番組(ユーロニュース)で「ノーコメント」というコーナーがあって世界中で起こっていることを、何のコメントも無く映像と現場音だけで観せています。この第三の目である淡々とした映像を観ることで、起こっている現実を主観的に考える(誰の判断がはいるのでなく)事が出来ます。(短いフィルムで2分くらいのものですが)
映像が感動や意思を伝えたり誘導したりするコミュニケーションツールとして社会に広く機能している昨今、現実を起こっている事実だけを提示するこの情報発信はさしずめ荒れ狂う冬の波浪の様に厳しく我々に迫ってくるようです。