映画の現場を体験して

以前募集を行った第2回庄内キネマ製作委員会に参加をした3年生の風間太樹さんと4年生の中島唯さんの体験談を掲載します!

「映画の現場に参加して」
映像学科3年 風間太樹

今回、はじめてプロの現場に参加して、撮影現場に対する考えが一新された。私はこれまでいくつかの作品を作ってきたが、その撮影現場の雰囲気だったり、それぞれの役職に対する意識が中途半端だったと思うくらいに学ぶ事が多かった。
私は撮影部として参加した訳だが、部ごとのチーム力というか組織力を強く感じた。チーフ、セカンド、サードとそれぞれに与えられた仕事を試行錯誤しながらも全うし、撮影現場を作り上げていく。
とても心地よい空間であった。現場では素早い判断力と想像力を求められた。段取りの段階でどのアングルで、どの画角で撮影するのか、チーフの動きを観察しつつ必要な機材を用意する、撮影の円滑化を意識した緊張感の溢れる現場であったように思う。
今回、最も勉強になったのは撮影までの流れだ。それは大学の授業で何度か学んだ訳だが、生の現場で見るものはまた違って見えた。特に「段取り」の重要性を強く感じた。これまで私が撮影してきた現場ではカット割りがほとんど決まっていて、段取りは演技を見る為のものであると勘違いしていた。カメラマンが役者の演技を見て、その演技を引き立たせるようなカットを組んでいく、その流れがとても新鮮で衝撃であった。冨樫監督は役者の演技をじっくり見極める方で、そしてスタッフをとても信頼している方だった。カメラマンである鈴木さんとカット割りについて会話している内容に耳を傾けると、気持ち良いくらいにお二人の考えは合致していて撮影が終始スムーズに進んでいた。脚本を読むだけでは絶対に思いつかないカット割りもあったり、機材をうまく活用したカットであったり、その空間がとても魅力的であった。
今回この現場で学んだことを以降に撮影した2本の現場に取り入れ、私なりに撮影部スタイルを作り上げた。現場の指揮、そして何より役者の演技を引き立たせるようなカメラワークを心がけて撮影してくる事が出来たと思う。映画の現場に参加出来て本当に良かった。これからも多くの作品に携わりよりよい作品を作り上げたいと思う。

冨樫組『夏がはじまる』撮影体験
映像学科4年 中島 唯

今回、私は冨樫組の撮影で、録音助手として参加した。
台本をもらった時に、自分の名前が印刷されているのを見て、感動したのを覚えている。
よくよく時を遡れば、私が録音という存在に初めて触れたのは、大学二年の演習の授業であった。故に、まさか二年後の自分が学生の内にプロの現場に入れるとは思いもしなかった。
現場に連れて行くかもしれないと講師の石寺さんに言われたのは、撮影の始まる約一ヶ月前。筋トレをしておけとも言われて、馬鹿みたいに毎日ウエイトを上げ下げしていた。結局あまり筋肉をつける事は出来なかったけれど。
現地入りしたのは、撮影の前日。
私と同様に学生として参加する大塚と風間と共に、庄内映画村の事務室へ。そこで初めて、他のスタッフと顔を合わせることになった。
この時はまだ緊張しつつも、浮かれ気分だったと思う。
今回は大学から借りた機材もあったので、ある程度のチェックをしてから、これから暫くお世話になる宿へと向かった。泊まる場所は、撮影現場でもある役者さんのご自宅。撮影の大半をこの場所で他のスタッフたちと合宿になるのだ。
その場所へ着いてようやく、スタッフの方全員との顔合わせをし、役者さんともお会いする事になった。
この日は夜に、クランクインに合わせた記者会見もあり、あぁこれから本当に参加するんだなという実感がじわじわと湧いてくる出来事でもあった。
けれど、浮かれ気分はここでおしまいだった。
撮影が始まってからは浮かれ気分なんてものは吹き飛んで、毎日泣きそうになりながら仕事をしていた。
現場に入って思い知らされたのは、自分の未熟さと動けなさだった。自分が認識している以上の無能さに、プレッシャーとストレスで毎日殆ど食事も取れないほどであった。
日が経つにつれ、更に突きつけられる自分の意識の低さや自らを甘やかしている弱さ。
何処かでまだ、学生気分の自分が居たのだと思う。怒られて泣いて、無理矢理メシを胃に押し込んで。それでも、折れずに最後までやりきれたから、結果としては良いのかもしれない。何故なら、現場に入る前に私は学校で色んな人にメンタル面を心配されていたから。そのせいか、前よりは少しだけ自分に自信がついた気がしなくもない。前田さんにも、やりきった事が大事と言ってもらえて安心している。
きっと今回、私が現場に入って一番変わったのは、現場への意識の持ち方だと思う。仕事はあまり上手に出来なかったけれど、自分が出来ない奴と言い訳にするな、急いでいるフリをするな、自分で限界を作るな、と怒られて、いつも以上に走るようになったし、返事もするようになった。それに、少しはスピードを上げる努力をするようになった。現場では当たり前のことなのかもしれないけれど、これらは私には出来ないことだったからかなり大きなこと。
 私は冨樫組の撮影に参加できた事を本当に嬉しく思う。そして、この9日間のことを忘れたくはない。とても辛い日々だったけれど、やっぱり自分は録音が好きなんだと思うから。

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