はじめに
東北芸術工科大学東北文化研究センターでは、平成24年度(2012年度)より文部科学省の私立大学戦略的研究基盤形成支援事業の採択を受け「環境動態を視点とした地域社会と集落形成に関する総合的研究」(詳しい内容はこちら)を実施しています。本アーカイブスで公開している写真は、本研究プロジェクトの一環としてすすめている「空から見た東北」という研究活動において撮影されたものです。
集落およびその周辺に広がる景観は、人々の自然利用や生業形態といった、その地域の暮らしを理解する手がかりとなります。どのような形の家屋が、集落内でどのように並んでいるのか。河川(沢)や道はどこを通っているのか。神社やお寺はどこにあるのか。どのような形の田畑が集落のどこに拓かれているのか。そして、その周りにはどのような森林が広がっているのか―。
もっとも地面に立って集落を見渡しても、家屋の一軒一軒が見えたり、田んぼの一画が見えたりするだけで、こうした集落の“全体像”をつかむのは難しいでしょう。高台に登ったり、あるいは鳥のように空から眺めてみたりすることで集落全体の景観を俯瞰することができるのです。東北地方の山間部、平野部、沿岸部に広がる様々な集落を対象とし、集落全体の景観が分かる写真を撮影し、それらをもとに統計データなどでは窺い知ることのできない生業形態の変化を探る。そして、東北地方の農山漁村のこれからを考える資料としてこれら記録資料の活用を図る。これが「空から見た東北」の目的です。
現在、震災復興や過疎・廃村化の継続的進行に伴い集落再編や地域再生のあり方が様々な分野で議論されています。そうした問題を考えるに当たり、まずは集落の現状を把握することが不可欠となります。本アーカイブスの資料を、地域の「今」を知り、これからを考える素材の一つとしてお役立て下さい。
写真資料に関する留意点
本アーカイブスで公開している写真には、小型飛行機に搭乗し、研究員が空中から集落を撮影したものと、集落が見渡せる高台から撮影したものとの2種類があります。
【空中より撮影】
小型飛行機に搭乗し、高度1,000メートル付近から撮影しています。撮影方向は、機体直下ではなく、機の進行方向に向かって左側の斜め下方(角度は任意)が主となっています。そのためトップページの地図上に撮影ポイントとして示されている地点と、実際に写真に写っている場所(範囲)とが異なっています。
現在公開をおこなっている写真は、以下の撮影フライトにより撮影されたものです(飛行経路は下の地図もご参照下さい)。
フライト1(2012年11月10日 午前9時45分~午後12時15分 地上天気:曇り)
花巻空港→北上市上空→一関市上空→塩竃市上空→石巻市付近→金華山島上空→南三陸町上空→気仙沼市上空→花巻空港
フライト2(2012年11月11日 午前9時30分~午後12時00分 地上天気:曇り時々雨)
花巻空港→気仙沼市上空→陸前高田市上空→釜石市上空→山田町上空→宮古市→宮古市田老上空→宮古市川井上空→遠野市上空→花巻空港
フライト3(2013年6月9日 午前10時00分~午後1時30分 地上天気:晴れ)
山形空港→天童市上空→山形市西部上空→上山市付近→山形市東部上空→山形市北部上空→山形市中央部上空→南陽市赤湯付近→川西町上空→米沢市上空→南陽市付近→長井市上空→飯豊町上空→小国町北部上空→村上市東部上空→小国町南部上空→長井市上空→白鷹町上空→朝日町上空→寒河江市上空→山形空港
フライト4(2013年6月9日 午後2時30分~午後5時00分 地上天気:曇り)
山形空港→河北町上空→東根市上空→村山市上空→大石田町上空→尾花沢市上空→大蔵村上空→戸沢村上空→酒田市上空→飛島上空→庄内空港付近→鶴岡市上空→鶴岡市大鳥上空→鶴岡市田麦俣上空→西川町上空→寒河江市上空→山形空港
【高台より撮影】
現地へ行き、集落を見渡せる高台から撮影しています。なかには定点観測として、日付を変えたびたび訪れて、ほぼ同じ地点の風景を撮っているものもあります。それらの写真を比較することで集落の季節的、経年的な変化を読み取ることができるでしょう。