研究活動

 

私立大学戦略的研究基盤形成支援事業(平成24年度~平成28年度)
「環境動態を視点とした地域社会と集落形成に関する総合的研究」
(研究代表 田口洋美)

<研究プロジェクトの目的・意義及び計画の概要>

 本研究の目的は、考古学、歴史学、民俗・人類学と法学あるいは工学系環境デザインといった学問分野の協働研究体制のもと「1万年という長期的タイムスパン、その歴史社会的コンテキストの上に21世紀型集住の再生、創出理念の構築を図る」ことにあった。本研究センターは、過去2期10年間にわたり、オープン・リサーチ・センター整備事業「東アジアのなかの日本文化に関する総合的な研究」と「東北地方における環境・生業・技術に関する歴史動態的総合研究」を実施してきた。これらのプロジェクトでは日本文化の東アジア地域における地位を追究し、後者では、考古学、歴史学、民俗・人類学という三学協働体制のもと、環境・生業・技術といった具体に着目し、東北地方を中心に人々の環境への社会文化的適応プロセスの把握に努めた。今回のプロジェクトはこれらの成果を踏まえ、「集落」として人が集い暮らすことの意味と機能をより鮮明に捉え、過疎・高齢化および居住の流動化社会における共同体創出のための新たな理念構築を目指した。ここでいう理念とは、人々が合意可能で、了解できる集住、集落形成の意味付けに他ならない。「伝統的」農山漁村において基盤生業であった農林水産業やこれに立脚した家制度(家の相続形態)、集落自治の変容、あるいは地方寺社の統合など、従来の集落やより広域的な地域社会で人々の結束を支えてきた生活要素に大きな変化が生じているなかで、その作業は喫緊である。
 研究においては各学問分野で互いに共通理解可能な資料の提示と相互連関が求められた。そのキーは〈集住、居住、集落〉場所性であった。当然、そこには生き方(生業のあり方)との関係が現れるわけであり、社会構造や生業技術構成も関わることになる。つまり極めて複雑な関係の総体としての集住、居住、集落ということになる。また、このような複雑な総体をいかに具体的な資料化へと導くかという問題も生じてくる。これについては、本学が芸術系大学であるという特色を活かし、視覚的に把握可能なより開かれた資料作りを心掛けた。
 本プロジェクトでは、これらの理念の提示と同時に、地域再生の担い手(地域の相続者)を育成するという実践的課題にも挑戦した。すなわち、PDやRA、その他学生たちの研究調査活動への積極的参画を促し、東北文化研究の発展に不可欠となる若手研究者の育成を同時に行うことでポスト過疎時代の「若者たちの東北」の実現を目指した。
 5年間のプロジェクト期間のうち、1年目から3年目までを基礎研究期間、4・5年目を応用研究期間とし調査研究活動を推進した。基礎研究期間には、考古、歴史、民俗・人類の3班に分かれ、国内外の集落を対象に歴史社会研究に取り組んだ。また同時に、地域再生の担い手育成や、地域づくりへの学術成果の活用方法を探る実践的研究に着手し、プロジェクト期間全体で軌道に乗せた。後期の応用研究期間には基礎研究を補足的に継続しつつ、各班の研究成果の統合へと軸足を移した。その際、法学あるいは工学系環境デザインの専門家とのコラボレーションも図り、歴史社会研究の成果を現代社会で了解可能な理念構築へとつなげた。
 基礎研究期間には、3つの学問分野ごとの班を活動の基本単位とし、適宜、班を横断した共同研究も実施した。さらに、先史時代を主対象とし自然環境を軸に人類史規模での集住のあり方を考究する「環境史研究」と、中世以降現代までを主対象に、自然のほか政治・経済的環境をも重視して集住の動態を追究する「地域比較研究」という二つの研究テーマを設定した。前者には考古班、後者には歴史班、民俗・人類班が主に従事した。
 一方、地域再生の担い手育成などを図る実践的研究を「地域資源活用研究」とし、記憶や古写真、戦前絵はがきなどを地域資源と位置づけ地域づくりへの活用方法を探った。その活動は環境史研究や地域比較研究とも連動しており、PD・RAや大学院生・学生にも積極的参画を促し、地域の諸課題解決に向け主体的に取り組み、地域再生の牽引者となってゆく若い人材の育成を図った。
 なお、当初は地域比較研究、環境史研究、地域資源活用研究を、上述した三班の連携的な活動単位(ユニット)として設定していたが、実際の活動面で煩雑さが生じたため、3年目から活動単位は班のみとし、上記の3区分はそれぞれ研究テーマの区分に置換した。

<研究成果の概要>

1.環境史研究および地域比較研究
(1)環境史研究
 環境史研究として考古班では、八戸市一帯を対象とし過去一万年間にわたる人々の集住(集落)に関する歴史動態研究、ならびに河川流域を単位とした遺跡群の比較研究を推進した。調査上の都合により縄文社会研究と古代社会研究とに区分したが、両者は連携的な関係にある。
 1年目の縄文社会研究では、「集落の歴史動態研究」として、八戸市において2年目以降、本格的な調査を行う準備のための班員検討会を開き、フィールド調査の企画、関係諸機関との調整、情報収集を行った。具体的には、GISを活用した八戸市域の縄文集落遺跡データベース作成に向けた準備を開始した。その他に環境史・集落遺跡の実地調査を計3回行った。古代社会研究でも検討会を開き、古代竪穴建物を中心とした遺跡情報、地形的・環境的情報の集成に着手した。
 2年目は長井が加わり研究レベルが向上した。縄文社会研究では遺跡データベ―ス作成に向けた研究会の開催や遺跡集成に向けた4度の検討会を行った。そして①参加メンバーが相互利用可能な「研究データベース」、②八戸市の遺跡発掘最新情報を網羅的に捉えるための「管理データベース」の作成に着手して、関連データベースモデルを構築した。その中間的成果を八戸市民に公表するため、公開講座を開催した。一方、古代社会研究ではデータベースの構築により5世紀後半から11世紀までに5度の集落動態の画期を明らかにした。立地に関しても7世紀と9世紀後葉に変化が見られることを明らかにしている。また今年度からは、山形県高畠町日向洞窟遺跡群の考古学的調査(発掘)も実施し、縄文草創期における人々の集住形態と環境との関係に関する研究にも着手した。この調査には学内外の多数の学部生・院生や本学卒業生が参加した。
 3年目は、前年度からの基礎研究を継続させると同時に、応用研究を見据え、新たに流域比較研究を立ち上げた。具体的には三面川流域、津軽ダム、小又川流域、最上川流域の広域比較を目的としており、今年度は研究集会を開催した。一方、八戸市における集落の歴史動態研究では、前年度の続きとして研究データベースの質的向上を目指した。とりわけ遺跡データベ―ス作成に向けた研究会を開催し、遺跡集成研究の実現に向けた4度の検討会を行った。また、古代班でも八戸市域における遺跡データベースの構築が進んだ。これにより、5世紀後半から11世紀までに5度の集落動態の画期が存在したことが明らかになった。立地に関しても7世紀と9世紀後葉に変化が見られることを明らかにしている。今年度は他に2回の研究会を実施し、理論面の強化も図った。一つが、縄文時代の集落構造を理解するうえで重要な鍵となる土坑の認定に関するものであり、もう一つが東北縄文社会において大型集落が盛衰した背景を民俗考古学的見地から議論したものである。また、考古班研究全体の中間的報告を兼ね本年度も公開講座を八戸市で実施した。
 4年目は、基礎研究を継続させるのと同時に、流域比較研究の具体的な研究を開始した。また、八戸市域における集落の歴史動態研究においては、前年度の続きとして研究データベースの質的向上を目指した。さらに考古班の研究成果のまとめに向け、研究会と公開講座を八戸市で行った。「古代班」でも、継続してきた①八戸市周辺の遺跡のデータベースに基づく基盤研究、②東北古代集落変遷に関わる考古学的・環境史的研究の二つについて、それぞれ具体的な調査と研究の進展がみられた。
 5年目は研究の総括を行った。とくに研究対象フィールドを「八戸」に限定し、過去4年間に蓄積した遺跡データの総合的な分析を進めた。
 以上のように、考古班では、八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館が作成した遺跡台帳をベースとして、青森県教育委員会による遺跡情報、その他この数年で新たに調査された遺跡項目を加えた最新の遺跡データベース(遺跡DB)を作成することができた。さらに、その分析を通し八戸市域を対象とし、グローバルな気候変動に対応する縄文時代以降の集落変遷の画期と立地変遷を明らかにすることができた。すなわち、縄文時代早期中葉における遺跡数の急増と低地利用、前期(海進後)における古八戸湾沿岸部への遺跡立地と拠点形成、中期における内陸部への遺跡進出と中期末葉から後期前葉における遺跡数の倍増、後・晩期における拠点形成と遺跡数の縮小、古代におけるドラスティックな集落変遷の過程を捕捉することができた。

(2)地域比較研究
 歴史班と民俗・人類班が取り組んできた地域比較研究は、日本東北地方を中心とした国内事例を対象とするものと、中国(中華人民共和国)雲南省や内蒙古自治区・黒竜江省の少数民族社会を対象とする海外研究に大きく分けられる。後者の海外研究は民俗・人類班が主導してきた。また、前者の国内研究では、特定の集落や地域を対象とした個別事例研究だけでなく、東北地方全体を対象として集落景観や民家などに着目し集落の拓かれ方や生業の変容パターンを考察する、「空から見た東北」(田口提唱)や「海から見た東北」(川島・森本提唱)や「民家から見た東北」(鈴木・田口提唱)といった地域横断型の比較研究も行ってきた。これら地域横断型の比較研究も民俗・人類班が主に担ってきた。
 東北地方を対象とした個別事例研究では基礎研究期間での資料収集や事例分析(研究会等での議論)に関しては歴史班と民俗・人類班とで分かれて進めてきた。歴史班では、主に中世から近・現代までの時間幅での、東北地方を主とした「集住の関係史」を解明することを共通のテーマとした。すなわち、集落の形成・維持の前提となる、土地や水面といった空間の所有・活用状況、信仰・宗教や地域リーダーといった集落の紐帯となる要素など、広く物質から精神までを手がかりに、時代や地域ごとの集落結節の様態を捉え、それらがその時期その場所で成立していた背景を明らかにすることを目指した。民俗・人類班も同じく、集落紐帯の要素(あるいは集落維持の「仕組み」)に注目し、近現代以降に発生した自然災害や政治経済的な環境の変化に対しそれら様々な慣習・権利関係をいかにつくり替え集落・文化を継承させてきたかについて明らかにすることを目指した。また、現代社会において、このような「伝統的」文化の継承が困難になっている(文化継承リスク(田口提唱)が高まっている)背景についても焦点を当て、海外研究との比較・統合を図っている。
 歴史班の主な調査研究フィールドは、青森県八戸市南郷区島守地区、岩手県一関市厳美町本寺地区、山形県山形市南原町旧前田村地区、山形県山形市蔵王上野地区、宮城県気仙沼市唐桑町鮪立地区である。一方、民俗・人類班では国内の事例研究に関しては、後述する「地域資源活用研究」でのブックレット作成のための資料収集(①、②)を兼ねた調査研究を行った。なお、歴史班でも本寺地区や鮪立地区を対象に「東北一万年のフィールドワーク」シリーズのブックレットの作成・刊行を行ったが、とくに鮪立地区に関しては、民俗・人類班の川島と鈴木が現地調査の学生指導に協力するなど、両班の協働が見られた。
 これらブックレット刊行以外に、とくに歴史班では個別事例研究の成果として、村上が中心になり調査・編集をおこなった『八戸藩庁日記狩猟関係史料集』や、竹原による『前田村文書目録』、竹原・中村による『山形市蔵王上野文書目録』といった史料集、文書目録の刊行がなされた。とりわけ『八戸藩庁日記狩猟関係史料集』の編集は、本寺地区など水田利用に基づく集落の変遷を軸に据えた他の歴史班の研究を相対化させるためおこなわれたものであるが、先に刊行した「東北諸藩におけるマタギを中心とした狩猟関係文書の研究」(田口・村上提唱)による『「弘前藩庁御国日記」狩猟関係史料集』(全三巻、いずれも村上・竹原・中村編)とあわせ藩政期の北東北諸藩での野生動物被害の実態とその対策、あるいは集落防衛のあり方の解明に寄与する大きな成果である。野生動物と人間との軋轢(いわゆる獣害問題)が深刻化している現代社会においてもその学術的意義は大きい。
 既述したように、歴史班と民俗・人類班は、鮪立地区でのブックレット作成調査以外では協働した調査活動はおこなってこなかった。しかし、プロジェクト3年目後半に着手した応用研究として、合同の研究会を行ってきた。その一つが入会を含めた土地所有に関わる法制度の研究会(2015年1月開催)である。また、翌2016年10月には東京農工大にて、漁業権に関する研究会を合同で実施した。これらの研究会では、様々な自然資源の利用と所有に関する権利の集まり、総体として「集落」を捉え、それらがとくに近現代以降いかに成立してきたのかを通史的に俯瞰するとともに、生業構造の変動に伴う農林漁業の衰退や、過疎高齢化など現代の東北社会を取り巻く社会的インパクトによっていかに変質しているのか、あるいはいかに継承しているのかを議論し、情報の共有を図った。
 次に、民俗・人類班が中心となり実施してきた地域横断型の比較研究と海外研究についても触れたい。
 地域横断型の比較研究の中でもとくに大きな成果を得たのが、「空から見た東北」である。これは空から集落景観を俯瞰することで、集落の拓かれ方や生業・自然利用の現況と変化パターンについて広域的な共通性と地域個別性を明らかにし、その背景を考察するものである。分析資料には国土地理院や林野庁が発行している空中写真の他、研究員が小型飛行機に搭乗し、集落後背地全体を撮影した写真を用いる。本プロジェクト全体で5回の撮影調査を実施し、茨城県北茨城市から青森県三沢市までの太平洋沿岸部を含む、東北6県と広範な範囲を対象に集落の記録を行った。撮影した写真の一部は、HPで一般公開し、市民に広く活用を呼びかけている。また、初年度に本資料を用いた公開講座も開催した。同様に海からの視点に基づき集落変遷を考える「海から見た東北」に関しても、初年度に公開シンポジウムを実施し、プロジェクトの初期段階からそれらの研究視座の提起を行った。
 海外研究に関しては、中国東北部(内蒙古自治区、黒竜江省)と雲南省の少数民族集落を調査対象地とし、初年度に実施した予備調査に続き、前者は3回の、後者は5回の本調査を行った。これらの調査対象地は、定住化政策等により大きな生業・社会変容を経験した社会であり、「伝統的」文化の継承のあり方が注目される。2年目(2014年2月)に、国内外の研究協力者を招き、日本と中国で起きている「文化継承リスク」に関する国際シンポジウムを開催することで、国内の事例研究を比較相対化していく研究視点を明確化させ、広く社会に提起することができた。
 以上のように地域比較研究での成果は関連する論文や、シンポジウム・研究会、HP等を通じて積極的に公開を行ってきたが、加えて本研究センターで編集発行している雑誌『東北学』でも関連する特集テーマを組んで情報発信に努めてきた。すなわち「災害の民俗知」(3号)、「棚田のアジア」(4号)「復興の海」(7号)、「東北、明日の大地」(8号)である。
 以上の環境史研究および地域比較研究の研究成果の総括として、最終年度の10月に東北歴史博物館にてクロージング・シンポジウム「東北の集住を考える―ポスト過疎化時代を生きる―」を開催した。さらに、それらの議論を受け、かつ応用研究として実施してきた法制度研究会の成果を踏まえ平成29(2017)年3月に工学系の環境デザイン、都市計画分野との研究会を開催した。本研究プロジェクトでは、集住(人が集い暮らすこと)や集落の意味と機能(〈集住・居住・集落〉といった「場所性」)を歴史文化研究のなかから抽出することにより、歴史社会的コンテキストに沿った共同体、コミュニティ創出の理念構築を最終的に目指してきた。また、「家」制度や土地所有制度、あるいは漁業権をはじめ山野河海にかかる所有権・占有権・利用権などの権利関係とその相続制度はそうした「場所性」を構成する重要な社会的要素であり、本研究プロジェクト応用研究における主要な分析視点となっている。そこで、各班が取り組んできた事例研究の統合の方向性を視野に入れながら論点の整理とテーマ設定を行い、これら「場所性」に関する共同研究会を随時開催してきた経緯がある。本研究会では、農村計画や都市計画など工学系環境デザイン分野の研究者たちと都市論、集落論、農村論に関する議論を深めることができた。そして、問題意識・背景の共有や研究課題のすり合わせを図り、集落再生や地域再編に係る制度設計、政策立案においても了解可能な集落創出理念の構築、提示へと本研究プロジェクトの最終的成果を導き出すことにした。

2.地域資源活用研究
 本プロジェクトでは、記憶や古写真や戦前絵はがきなどの記録資料を地域資源として位置づけ収集を図るとともに、今後の集落再生をめぐる議論に役立つ活用のあり方を提示することを目的とする。加えて、学生やPD、RA等の積極的参加を求め、地域再生の牽引者となってゆく若い人材の育成を図る。先の環境史研究や地域比較研究とも連動し両研究やその成果を具体的地域実践に結びつける役割も持つ。本研究での活動内容は5つに大別される。①ブックレット「〈東北一万年のフィールドワーク〉」シリーズの作成・刊行、②ブックレット「〈むらの記憶〉」シリーズの作成・刊行、③集落の景観および分布に関する空中写真の収集・撮影、④地域資源のデジタルアーカイブ化と活用、⑤その他の若手活用、である。
 ①は、学生主体の調査の成果をブックレット〈東北一万年のフィールドワーク〉シリーズにまとめてゆくものである。本プロジェクトでは北秋田市阿仁根子地区、山形市滝山地区、一関市厳美町本寺地区、気仙沼市唐桑町鮪立地区、鶴岡市大鳥地区、西置賜郡白鷹町深山・萩野地区を対象とした計6冊を刊行することができた。
 ②は、東日本大震災被災地やダム建設による廃村など、災害その他の契機により、大きく姿を変えたり、失われてしまったりした集落を対象とする。調査成果はブックレット〈むらの記憶〉シリーズにまとめてゆく。調査には学生も部分的に参加している。これまでに川島が長年調査・研究を行ってきた宮城県気仙沼市小々汐集落を対象に、被災前の年中行事をまとめたブックレットを刊行した。また、戦後開拓され、1981年にダム建設に伴い集団移転したむつ市川内町(旧川内村)野平を対象に、森本・鈴木・蛯原が中心になり調査を行い、ブックレットにまとめた。これら2冊のブックレットは、刊行後、元住民や関係者からたくさんの問い合わせを受けたように高い反響を得た。
 ③は、民俗・人類班による「空から見た東北」「海から見た東北」と連動している。2014年8月には、「空から見た東北」で撮影した写真を一般公開する場としてのWebサイト『空から見た東北』を立ち上げ、広く市民に向けその活用を促している。これは、過去10年間にわたり本研究センターがオープン・リサーチ・センター整備事業を通して構築してきた「東北文化研究センターアーカイブス」の新たな一翼として位置づけられる。
 ④は、上記アーカイブスの一環であり、戦前絵はがきや古写真の収集と、Webサイト「近現代の絵はがき・写真」での公開を内容とする。プロジェクト2年目に、山形県内の絵はがき収集家より合計約3万点を借用し、そのなかから東北地方や自然災害に関する絵はがきを選び、デジタルデータ化とWeb公開の作業を進めてきた。プロジェクト期間内に約14,215点のWeb公開が完了させることができた。その他、戦前絵はがきを中心に、新たに572点を購入し、デジタルデータ化とWeb公開を完了させた。本データベースは、学外でも広く活用されるものとなっている。
 ⑤その他、上記①~④に含まれない若手(学生など)活用もまた、本研究の一環である。特筆すべきものに、考古班が山形県高畠町で2013年より実施してきた洞窟遺跡群の考古学的調査が挙げられる。この国指定史跡・日向洞窟遺跡周辺部における考古学的調査には、本学学部生・大学院生の他、東北大学や富山大学、早稲田大学、國學院大學、立命館大学、茨城大学の大学院生・学部生など、多数の学生が参加した。研究と教育の連携という点で重要なパイプを構築させることを目的とした本調査には、まさに地域からの熱い支援を得て実現できた。山形県高畠町の地域資源を開発し、その研究成果を地域に還元するという実践教育の場として、あるいは若手研究者の育成の場として、山形県高畠町における洞窟遺跡群の考古学的調査は、貴重な試みになったといえる。
 総じて、上記①~⑤の各種調査や作業には、PD・RAほか、学内外の学部生・院生の積極的・継続的参加を得ており、若い人材育成の取り組みも順調に行うことができた。

<研究成果の公開>

研究会】
平成28年度
 ◆応用研究総括研究会 平成29年3月1日
 ◆第6回「前田村文書」研究報告会 平成29年1月25日
 ◆第3回考古班研究集会 平成27年12月13日

 ◆地域比較研究総括にむけての研究会 平成28年12月24日
 ◆第6回「前田村文書」研究報告会 平成28年7月26日
 ◆全体研究会 平成28年6月18日-19日
平成27年度

 ◆第4回考古班研究集会 平成28年5月17日
 ◆第5回「前田村文書」研究報告会 平成28年1月27日
 ◆第3回考古班研究集会 平成27年12月13日

 ◆漁業権研究会 平成27年10月3日-4日
 ◆縄文時代における河川流域の集落変遷に関する調査と研究会 平成27年10月2日-4日
 ◆全体研究会 平成27年7月18日-19日
平成26年度
 ◆第2回河川流域比較研究会 平成27年2月28日
 ◆歴史班研究会 平成27年2月8日
 ◆第1回民俗人類班研究会 平成27年1月10日
 ◆第2回考古班研究集会 平成27年12月20日
 ◆第1回河川流域比較研究会 平成27年6月21日
 ◆第1回考古班研究集会 平成27年6月15日

 ◆ 第2回前田村文書研究会 平成26年5月27日
平成25年度
 ◆第3回全体研究会 平成26年2月6日-7日
 ◆第1回前田村文書研究会 平成25年10月23日
 ◆骨寺ブックレット作成に係る研究会 平成25年7月10日
平成24年度
 ◆第2回全体研究会 平成25年2月18日-19日
 ◆学内研究会「空中写真判読と集落図」 平成25年1月25日
 ◆第1回全体研究会 平成24年6月16日-17日

シンポジウムならびに公開講座】
平成28年度
 ◆総括シンポジウム「東北の集住を考える―ポスト過疎化時代を生きる― 」 平成28年10月29日
平成27年度
 ◆公開講座「日常の彩り—化粧をとおして見る日本と中国の美的世界—」 平成27年11月1日 
 ◆公開講座「『八戸の集落一万年』―なぜムラができ、消えたか?― Vol.3」 平成27年12月13日
 ◆「日向洞窟遺跡発掘調査現地説明会」 平成27年9月12日
 ◆公開講座「眠りから覚めた日向洞窟遺跡 —その魅力に迫る—」 平成27年9月12日
 ◆公開講座「東北地方を中心とした中山間地域の未来を考える –放射能汚染以降、東北の自然再生を目指して–」 平成27年6月27日
平成26年度
 ◆公開講座「縄文の美 —実用性を遥かに超える芸術的表現」 平成27年1月28日
 ◆公開講座「明治時代の感染症パニック―見えない敵とどう闘ってきたのか?」 平成27年1月14日
 ◆公開講座「『八戸の集落一万年』―なぜムラができ、消えたか?― Vol.2」 平成26年12月14日
 ◆公開講座「「百姓」繚乱の江戸時代 ―東北の村人たちの生き方―」 平成26年6月21日
平成25年度
 ◆公開シンポジウム「日本と中国にみる文化継承リスク―伝統は生き残れるか―」 平成26年2月8日
 ◆公開講座「『八戸の集落一万年』―なぜムラができ、消えたか?― Vol.1」 平成25年12月14日
 ◆公開講座「民俗考古学事始―縄紋人の生活を復元する―」 平成25年6月26日
平成24年度
 ◆公開講座「最上川の文化的景観―21世紀の地域づくりのために―」 平成25年1月26日 
 ◆公開講座「出羽三山の宇宙―羽黒山の開山伝承と景観のコスモロジー―」 平成25年1月26日 
 ◆公開講座「空から見た東北―動く森、動く集落―」 平成25年1月9日 
 ◆公開シンポジウム「海から見た東北」 平成24年11月24日
 ◆公開講座「縄紋時代の集落変遷」 平成24年11月14日 
 ◆公開講座「縄紋集落と気候変動―長期集住と分散居住―」 平成24年6月20日

展示】
平成25年度
 ◆「謝黎コレクション展『北と南の混淆~旗袍に隠された近代中国の歴史~』」 平成25年10月19日-11月5日
 ◆「関野吉晴写真展『海のグレートジャーニー~人類の旅~』」 平成25年6月12日-6月28日
平成24年度
 ◆「内藤正敏写真展『神々の異界―修験道・マンダラ宇宙・生命の思想―』」 平成25年1月15日-2月2日

刊行物】
ブックレット「東北一万年のフィールドワーク」
 ◆14『養蚕と紙漉きの記憶 –白鷹町 深山・萩野–』 平成29年3月20日発行
 ◆13『大鳥』 平成29年3月20日発行
 ◆12『鮪立』 平成28年3月15日発行
 ◆11『本寺 -山間に息づくむらの暮らし-』 平成26年10月15日発行
 ◆10『瀧山川 -石碑と信仰-』 平成26年9月10日発行
 ◆9『阿仁根子』 平成26年3月15日発行
ブックレット<むらの記憶>
 ◆2『下北半島野平 ―写真に見る戦後開拓村の歩み―』 平成27年3月23日発行
 ◆1『小々汐仁屋の年中行事』 平成26年3月1日発行
研究成果報告書
 ◆『平成24年度〜28年度研究成果報告書』 平成29年3月27日発行
 ◆『八戸藩庁日記狩猟関係史料集』 平成28年3月15日発行
 ◆『平成27年度研究成果報告書』 平成28年3月5日発行
 ◆『日向洞窟遺跡の発掘記録 第1次発掘調査報告書』 平成27年4月10日発行
 ◆『平成26年度研究成果報告書』 平成27年3月5日発行
 ◆『平成25年度研究成果報告書』 平成26年3月5日発行
 ◆『平成24年度研究成果報告書』 平成25年3月5日発行
東北学
 ◆『東北学』08 東北、明日の大地 発行日:平成28年8月1日
 ◆『東北学』07 復興の海 発行日:平成28年2月1日
 ◆『東北学』06 オオカミの行方 発行日:平成27年7月30日
 ◆『東北学』05 縄文の至宝 発行日:平成27年1月30日
 ◆『東北学』04 棚田のアジア 発行日:平成26年7月30日 
 ◆『東北学』03 災害の民俗知 発行日:平成26年1月30日

フィールド調査】
活動報告にて、調査報告を随時掲載