『「弘前藩庁御国日記」狩猟関係史料集』 (全3巻)

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刊行にあたって

 本史料集は、東北芸術工科大学東北文化研究センターで取り組んでいる研究プロジェクト『東北地方における環境・生業・技術に関する歴史動態的総合研究』(文部科学省私立大学学術研究高度化推進事業「オープン・リサーチ・センター整備事業」)の成果として発表するものである。

 この研究プロジェクトでは、人と自然の関係史という視点から民俗学・考古学・歴史学が連携し、過去一万年にわたる東北地方の歴史復元をひとつの目標としている。その一環として歴史班では、中山間地の山野利用、漁師の知に注目した漁村の生業などに加え、民俗班との連携を見据えた狩猟関係研究を取り上げた。

 この狩猟関係研究の柱となるのが、村上一馬によって進められている近世弘前藩の研究である。その成果のひとつとして、本史料集『「弘前藩庁御国日記」狩猟関係史料集』を刊行する。「弘前藩庁御国日記」(弘前市立弘前図書館蔵)とは、弘前藩政全般が記録された藩日記である。同史料は、欠本はあるものの寛文元年(1661)から元治元年(1864)、さらに慶応三年(1867)を含むおよそ200年分の記録であり、その数は冊数で3,300冊以上、全巻で100万頁にも及ぶ極めて膨大なものである。その全てに目を通し、「猟師」および「狩猟」に関する全記録の抽出を目指したものが本史料集である。当然、史料集も相当量になるため、本巻を含め三巻構成となっている。

 さらに本史料集の特筆すべき点としては、猟師の活動ばかりでなく生類憐み政策や抜荷取締なども見据えた史料選定を行っていることがあげられる。加えて、史料の各所に付された注釈や「地名新旧対照一覧表」、「狩猟者名一覧表」は史料の読解を助けてくれる。とくに「狩猟者名一覧表」は、膨大な史料集を翻刻した村上だからこそ作成できた貴重な資料として評価できよう。

ところで、この史料集の刊行とあわせるかたちで、2010年5月16日に第四回歴史班研究会『「弘前藩庁御国日記」に見る近世開拓期の諸相 ―近世マタギの実態を中心に―』を開催した。同研究会は、本プロジェクトの研究代表者田口洋美による「本研究プロジェクトにおける近世弘前藩史料研究の位置づけ」にはじまり、村上の基調報告、さらに鯨井千佐登(国立仙台高等専門学校)・菊池勇夫(宮城学院女子大学)・竹原万雄(東北芸術工科大学)のコメントというプログラムですすめられた。その際の田口報告は、本研究プロジェクトにおける弘前藩研究の位置づけはもちろん、歴史学と民俗学の関係、村上の研究テーマのひとつでもある狩猟をめぐる越境について具体事例をあげながら説明されるなど、本史料集を活用するうえで参考にしていただきたい内容であった。そこで、この報告内容に若干の加筆修正をして、史料集の序文として掲載することとした。

 以上のような経緯で本史料集は刊行された。これによって、近世東北の狩猟史がおおいに発展することを期待したい。

 本史料集が刊行に至ることができたのは、弘前市立弘前図書館の多大なる協力による。その刊行についても同館より了解をいただいたことを篤く御礼申し上げる。 
    
        研究代表 田口洋美

 

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『「弘前藩庁御国日記」狩猟関係史料集』 第一巻

 編集 村上一馬・竹原万雄・中村只吾
 発行 東北芸術工科大学東北文化研究センター
    2011年2月28日

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『「弘前藩庁御国日記」狩猟関係史料集』 第二巻

 編集 村上一馬・竹原万雄・中村只吾
 発行 東北芸術工科大学東北文化研究センター
    2011年9月30日

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『「弘前藩庁御国日記」狩猟関係史料集』 第三巻

 編集 村上一馬・竹原万雄・中村只吾
 発行 東北芸術工科大学東北文化研究センター
    2012年3月1日