王様とボク


月刊シナリオ 2012 . 10
「自作を語る」コーナーに寄稿

「あいつ、どうしてるのかなぁ・・・」
時間はとても残酷だ。歳をとるとはこういうことかもしれないと思う。かつて毎週のように遊び、メシを喰い、語り合っていたのに、いつの間にか会うこともなく、連絡をとることもなくなった昔の友のことを、ふと思い出すことがある。とくに志半ばで、この世界から去って行った友たち、そしてなによりも、自ら命を絶ってしまった友のことは、何らかの節目が訪れると必ず思い出す。
人は生きて行く上で、必ずと言っていいほど、傷つき、辛く悲しい出来事を経験する。?子ども?の頃、そのような出来事とちゃんと向き合う機会を逸してしまうと、?大人?になりきらないままに、大切な?何か?を封印して生きていくことになるのだろう。この物語は、予備校で勉強の日々をおくる主人公・ミキヒコが、18歳の誕生日に12年間眠り続け、精神が6歳児のまま時間が止まっている幼少の頃の大切な友達・モリオと再会する。ミキヒコは、モリオと一緒に施設から抜け出し、社会から飛び出し、旅に出ようとする。しかし、それはミキヒコが思っていた「子どもにもどる旅」ではなかった。かつて一番大切な存在だった友が突然消えてしまったことを受け入れるための「大人になる旅」なのであった。
封印していた?何か?を解く。自分でかけた呪縛は自分でしか解けないのだから、人はどんなに辛く悲しい出来事に出会おうとも、その事実と真摯に向き合い、それを受け入れて、どうしようもない喪失感と寂寥感を抱き続けることになっても、?生き?続けていかなければならない。人生はとても残酷だ。
「あいつがこの映画観たらなんていうだろうなぁ・・・」
ボクが作った映画をすべて観て、誰よりも辛辣で愛情たっぷりの感想を必ず語ってくれた、友はもういない。

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