あたらしい灯を迎える準備

『ひじおりの灯 2012』ポスターのデザインが完成しました。
今年は作品そのものではなく、温泉街の中心に建つ木造の旧郵便局舎や、肘折青年団の屋台『肘折黒』など、点灯中の臨場感が伝わる写真をあえて選びました。地元の人々との交流こそ『ひじおりの灯』の醍醐味です。

週明けに印刷して山形県内はもちろん、全国各地に郵送します。
観光交流や街おこし、アートと地域に関わる施設・団体で、ポスターを貼り出していただけるところ、募集中です。県内外に関わらず、ぜひメールください。
美術館大学センターのメールフォーム

『ひじおりの灯』は、毎年あたらしい絵に張り替えています。
先週、美術館大学センタースタッフの立花泰香さんと、版画コース4年の千田若菜さんが、旧肘折小中学校校舎に保管されている2011年度の灯ろう絵を剥がしてきました。

剥がし終え、骨だけになった『ひじおりの灯』は、鶴岡の柿崎建具店に運ばれ、学生たちの絵の仕上がりを待ちます。

『ひじおりの灯』に使用している和紙は、西川町の三浦一之さんが手漉きしている月山和紙で、木枠への表具は鶴岡の表具師・齋藤高子さんに毎年お願いしています。和糊で丁寧にピンと貼られているので、コツさえつかめばスルスルときれいに剥がすことができます。
手漉きの和紙は伸縮するのに、一ヶ月も屋外で飾っていても、紙が割れたりよじれたりしないのは、実はすごいこと。『ひじおりの灯』は、山形の職人さんの技術に支えられています。

剥がした灯ろう絵はすべて大切に保管し、一部は額に入れて飾っています。左の紫の作品は、現スタッフの立花泰香さんが大学院生のときに『ひじおりの灯』に参加して描いたもの。5年前の『ひじおりの灯』です。

一方、東北芸術工科大学のアトリエでは、学生たちが作画の準備にとりかかっています。大学院の演習や夏のコンクールと並行しての制作なので、前期の課題が一段落したこれからが描画のピークになります。

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灯ろうの木枠にぐるりと貼る和紙の幅は2メートルちかくになります。手漉きの和紙ではその幅はとれないので、『ひじおりの灯』の制作はまず和紙を「継ぐ」ことからはじまります。日本画や版画を学ぶ学生なら、和紙の扱いは日頃から慣れたもの。繊維をほぐしながら、手際よく継いでいきます。

先輩から後輩へ、職人さんから学生へ、そして最後は地域の人へ――。
手から手へ丁寧に継がれている『ひじおりの灯』。毎年、下処理を終えた白い和紙に「最初の一筆」を入れるのはとても緊張すると、学生たちはいいます。一筆一筆が、たくさんの人の技術や想いに連なっているという、凛とした緊張感は、若い彼らが画家になる上で、とてもよい体感・勉強だと思うのです。

宮本武典(キュレーター/美術館大学センター准教授)

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