「肘響」―電子音楽と湯の織りなすトリニティ
2013/07/28
「ひじおりの灯2013」の点灯初日、肘折温泉街で音楽イベント「肘響」が開催されました。インストゥメンタルを中心にした電子音楽と、1200年の歴史をもつ鄙びた湯治場とのコラボレーション。凉音堂茶舗プロデュースのもと、夕刻から、湯治部屋、共同浴場、公民館、郵便局舎など、さまざまな場所をつなぎながら、映像や音楽の即興ライブがおこなわれました。
あいにくの雨模様でしたが、狭い路地の地面を打つ雨だれの音と、玄関口など、各所にさりげなく置かれたラジオから、途切れながら聴こえてくるサウンドの共振が心地よく、「肘響」は、音楽というより温泉街全体を舞台にした一種のサウンド・インスタレーションだったのでした。
メイン会場の肘折センターでのライブでは、人がすっぽり隠れるくらいの「ひじおりの灯」が登場。巨大灯籠をキャンバスにおこなわれた青森出身の絵描き・マジオさんのライブペインティングには、坂本大三郎さんが吹く法螺貝の音が重ねられ、デジタル映像や音楽の手触りに、このカルデラ盆地の底の夜にふさわしい、原始的なマテリアルを与えていました。聞き忘れたのですが、あれは『雨の樹/Rain Tree』だったのでしょうか。