アトリエと講評と、近づく夏

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東北芸術工科大学のアトリエでは、今夏の灯籠作画者たちによる灯籠絵の制作が大詰めです。先月5月16日-18日の現地での取材合宿を経て、それぞれが持ち帰ってきた“肘折”。1ヵ月後の点灯に向け、一筆一筆、丁寧に描かれています。

灯籠絵が描かれているのは、〈月山和紙〉。毎年、山形県西川町の紙漉き職人三浦さんが漉いて下さった大判の和紙を継ぎ、作画者の皆さんへ1人1枚配布しています。普段和紙に描かない学生はもちろんですが、和紙に触れる機会が多い日本画の学生たちも、この和紙に筆を入れる瞬間は緊張すると言います。入念に下絵を重ね、また別の紙に描いたのち、やっと和紙に筆を落とせる方も少なくないようです。

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また、先週水曜日には、作画を担当する皆さんの他、美術科の先生方、肘折地区からも実行委員を中心とする皆さんにお越しいただき、制作中の灯籠絵の中間講評を行いました。
先月、取材合宿で自らの足で肘折を歩き、画学生ならではのスケッチや地元の方への聞き書きを通じて、触れた“肘折”。
取材合宿時のプラン発表会では、描くイメージがまだ曖昧だった学生も、1ヶ月の制作期間を経て、それぞれの物語が形になってきているようでした。

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中間報告会にご参加いただいた銅版画家の佐藤真衣さん。昨年の灯籠絵「湯治遊戯」が記憶に新しい方も多いかと思いますが、今年は昨年の灯籠絵の続編を描いているとのこと。昼、太陽のもとに見る絵も、夜のあかりに灯された絵も、鮮やかで活き活きとした真衣さんの灯籠絵。今夏はじめて灯籠絵を描く学生たちはその制作技法にも興味津々の様子でした。

「ひじおりの灯」の灯籠絵は、昼と夜、二つの姿を見ることができます。日が暮れて、温泉街にそれぞれの灯籠絵が灯るとき、昼間とは少し異なる物語がそこに立ち上るような気がします。鮮やかに色を落とした部分、素朴な和紙のままの余白、独特な形をしている八角形の木枠の影、光の間。
絵を見せることは光を見せることでもあると、ある先生がおっしゃっていました。
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夕暮れとともに、光を放ちはじめる灯籠絵。

今夏の灯籠絵が揃うまで、残り1週間。
梅雨を前にますます蒸し暑さが増している山形ですが、
1週間後には、「ひじおりの灯」9回目の夏がぐんと近づく、そんな気がしています。
灯籠作画者の皆さん、ラストスパートどうぞよろしくお願いします!

(美術館大学センター 鈴木淑子)

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