10年目、初夏の取材合宿へ

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月山の麓で先年続く湯治場肘折温泉で、東北芸術工科大学と肘折地区が2007年から共同開催している灯籠プロジェクト「ひじおりの灯」。在学生や卒業生が描いた灯籠絵は毎夏張り替えられ、いにしえの湯治場の夏の夜をほのかに照らしています。

5月21日(土)から23日(月)まで、灯籠絵を描くための2泊3日の取材合宿へ!
今夏の灯籠絵を担当する大学院生と卒業生の皆さんともに少しずつ近くなる霊峰月山の姿に胸を躍らせながら、バスで北上。タイムワープできそうなトンネルを抜けた先、カルデラの底にある肘折の集落を歩けば、轟々と雪解けの音を立てて流れる銅山川、温泉街に脈々と湧き出る湯の音にだんだんと身体がチューニングされながら、その土地の感覚が呼び起こされていきます。

地区の皆さんに温泉街や地蔵倉、大蔵鉱山跡などを案内いただき肘折の暮らしや歴史に触れたあとは、各々自主取材。絵を描いている皆さんならではのスケッチ、地元の方への聞き書きを通じ、灯籠絵として描くストーリーを膨らませていきます。

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2日目の夜には、共同浴場上の湯の2Fにて「灯籠絵のプラン発表会」。各々が2日間の取材で捉えた「肘折」をどのように灯籠絵として表現していくか。 あかりを灯す側である地区の皆さんからもご意見を頂きながら、構想をさらに深めていきました。
2泊3日という短い時間ながら、暮らしの情景や歴史を単に持ち帰るだけでなく、土地や人々と丁寧に対話を重ねるスタイルで行う「ひじおりの灯」の取材はなかなか体力が要りますが、それぞれ表現者としての感覚を研ぎ澄ませながら、充実した取材となったようです。

また、取材合宿と平行して、現地で「ひじおりの灯2016」公式ビジュアルの撮影も行いました。メインビジュアルとして紹介する灯籠絵のアートワークは、「ひじおりの灯」でもおなじみ、画家の田中望さん。灯籠のあかりによって、プロジェクトのこれまでと〈これからの10年〉を照らし出すような、ささやかなあかりがじんわり灯るポスターになりそうです。

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肘折地区の皆さま、3日間本当にありがとうございました。
これより、各自のアトリエで制作を開始。地区の皆さんと大学が重ねてきた10年という月日を越え、「ひじおりの灯」はレジデンス的なアートプロジェクトでありながら、描いた灯籠絵を地区へ納め、そこに描かれた「肘折」を地区の皆さんと作者がともに物語るような協働意識のもとで灯るプロジェクトなのではないかと感じています。

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山形に戻り残雪の月山を眺めながら、この夏に灯される物語と〈これからの10年〉をぼんやりと思い浮かべながら点灯にむけた準備を。
10年目も、あかりを灯してお待ちしてます!

(美術館大学センター 鈴木淑子)

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