中間講評、物語のに下絵にどっぷり浸かる
2016/06/14
先月末の「ひじおりの灯」取材合宿から約半月。東北芸術工科大学の大学院生や卒業生を中心とする灯籠絵の描き手たち、美術科の先生方、また肘折地区から旅館や商店の若旦那の皆さんにもお越しいただき、制作中の灯籠絵を持ち寄って中間報告会を行いました。
取材合宿では、温泉街や周辺の山々を歩いてのスケッチや地元の方への聞き書きを通じ、各々の視点から“肘折”という土地を捉えた制作者の皆さん。それぞれ制作を進めてきましたが、本番用の〈月山和紙〉に筆を入れることができた方はまだ少数派。原寸大の下絵やドローイングなどを持ち寄った方も多く、完成されていないがゆえの混沌として濃密な表現が教室じゅうにに立ち込めます。 制作者の脳内をめくるように持ち寄った下絵を机に並べながら、現時点での制作状況や作品のイメージをみんなで共有しました。
今はまだ平面作品ですが、八角の木枠に貼られることでまた違った表情を私たちに見せてくれる灯籠絵。「あかりが灯ったらどんなふうに見えるだろう?」といった技法的なことはもちろん、「ここに描かれた歴史は実は・・・」など地区の皆さんから地元目線のコメントをいただき、肘折の土地に蓄積されてきた記憶や物語を少しずつ呼び起こしながら、作品としての表現を深めていきます。
こうして作画者と地区の皆さんとの間で丁寧なコミュニケーションを重ねることで描かれていく「ひじおりの灯」。「灯籠絵が飾られるたびに見慣れた土地をまたひとつ生き生きとした目で見ることができる」と地区の方がおっしゃっていたように、灯籠絵が温泉街で灯されたとき、そこに描かれた情景は制作者の表現としてだけの枠を越え、肘折に暮らす皆さん自身の物語としても息づき始めるように思います。肘折の皆さんは灯籠絵の「受け手」であり、「語り部」でもある。今年の新作灯籠は16作品。その灯籠絵を介して、制作者、地区の皆さん、またお客さんの間でどんなことが語られるのかとても楽しみです。
ちょうど梅雨入りした山形。自身の表現と地域の中で描くということ、その狭間で接近し離れ様々なチャレンジを重ねながら、だんだんと夏が近づいていきます。
灯籠絵の締め切りは7月初旬!物語が匂い立つまでまだもう少し、それぞれアトリエで灯籠絵と向き合う日々が続きそうです。
(美術館大学センター 鈴木淑子)
地区の皆さんと作画メンバー、「点灯まであと2ヶ月!10年目もあかりを灯して待ってます!」の図。
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