真夜中の廃校にて

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「ひじおりの灯2016」の点灯まで、あと1ヶ月余り。灯籠絵の制作も山場を迎えています。
プロジェクトが年月を重ねるなかで、過去に灯籠絵を描いたメンバーがもう一度灯籠絵の描き手として参加してくれることが増え、再会と「今年はどんな絵を描いてくれるのだろう」という期待感が高まる10年目。先週末、そんな卒業生メンバーが多く集う共同アトリエ「公房 森の月かげ」におじゃましました。

通称「月かげ」は、2年前に廃校となった旧宮生小学校(上山市)を利活用し、昨年春アトリエとして生まれ変わった場所です。運営するのは、「ひじおりの灯」でもおなじみ日本画コースの教授で日本画家の三瀬夏之介先生をはじめ、山口裕子さん、浅野友理子さん、佐々木優衣さんといった芸工大の卒業生たち。同じくアトリエを構える大学院生の久松知子さんも今年はじめて「ひじおりの灯」の灯籠絵を描きます。

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昇降口を抜け、下駄箱で靴を履き替える懐かしい動作にドキドキしながら階段を昇ると、かつて子どもたちの声がにぎやかに響いていた一つ一つの教室に、それぞれの制作の場がありました。大型の作品に、キャンバスや画具、制作のための写真や資料、ドローイングなどが並ぶなかに、灯籠絵を描く月山和紙が。5月中旬の取材合宿に加えて、自主取材を行うメンバーも。先月の中間報告会ではまだ下絵の状態だった絵も、一筆一筆、和紙に筆が落とされ、それぞれ描きたいイメージが形になってきていました。

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作画メンバーに配られる和紙は本番用の1枚のみ。普段から和紙に描いている方でも、最初の一筆は緊張するといいます。傍らにライトを用意して裏から光をあてながら、灯りの通り具合を確認します。中にはダンボールを使って灯籠の木枠を自作し、具体的にイメージする方も!描きたい歴史ひとつをとっても、和紙のなかで光をどう扱うかによって、その歴史のどこに光をあてたいかが変わる奥深さがあります。

今年はどんな灯籠絵が揃うのだろうと取材に夢中になりふと外を見ると、窓の外には肘折にも似た真っ暗闇が。目をこらせばジロリ、動物たちの気配も現れそうな真夜中の廃校で灯籠絵制作の追い込みは続きます。

(美術館大学センター 鈴木淑子)

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