大蛇のような橋
2013/04/16
この夏、7回目の点灯となる『ひじおりの灯』の打ち合わせで、雪解けの肘折温泉郷に行ってきました。
分厚い雪壁に覆われた「湯の台」から一気にカルデラ盆地に車で駆け下りると、
集落の入口に曲がりくねった巨大な橋がかかっていました。
その名も、「希望(のぞみ)橋」。
昨年春の地滑りで崩落した斜面にかかる仮設のラーメン橋です。
*「ラーメン橋(ラーメンきょう)」とは?……橋梁形式の一つであり、主桁と橋脚・橋台を剛結構造としたものである。ラーメンは『骨組み』を意味するドイツ語のRahmenに由来するもので、 英語ではRigid frame bridgeと称する。
ご覧の通り、今もこれだけ雪が残る肘折ですから、
橋がなければ集落は生活道路を絶たれ、雪の壁に囲まれた陸の孤島と化していました。
今日から除雪がはじまった迂回路が開通し次第、
ラーメン橋は再び七ヶ月の工事期間を経て正式に完成します。
2008年の肘折小中学校閉校、2011年の東日本大震災による風評被害、
2012年の記録的大雪に生活道路の地滑り…… 苦難が重なる肘折温泉ですが、
地区の人々は逞しく、前向きで、夏の『ひじおりの灯2013』をどう楽しむか、
地区代表の須藤秀一さん、つたや肘折ホテルの柿崎雄一さん、
肘折青年団の隆一君、寛人さん、旅館青年部の皆さんと、
あれこれ作戦会議をしてきました。
それにしても、このラーメン橋の偉容には圧倒されます。
橋のたもとに流れる小松淵には、大蛇にまつわる有名な民話も残っていて、
まるで巨大なオロチが銅山川から這い出しているかのよう。
H鋼で組まれた無骨な姿だからこそのプリミティブな迫力があります。
この橋の異形の姿もまた、むかし退治された大蛇の物語のように、
自然と人間の関係を示す象徴的な光景として後世に語り継がれることでしょう。
宮本武典