灯ろう紹介〈2〉
2011/08/25
前の記事で紹介した早坂豆腐店さんの周りの旅館では、こんな灯ろうたちが飾られています。
亀屋旅館さんの玄関先を彩るのは、印刷関係のお仕事をしながら木版で作品制作を続けている卒業生、千葉さやかさんの作品です。
亀屋さんはいつも宿泊部屋にこの〈亀の甲せんべい〉をお茶菓子として置くそうで、甲羅模様の裏側は砂糖でしましま模様になっています。
作品には必ずしま模様を取り入れているという千葉さんが、偶然亀屋さんの灯ろうを担当する事になりました。初めておせんべいに出会ったとき、「これだ!」とすぐに灯ろうのモチーフが決まったそうです。
赤地の背景におせんべいたちが、オモテ・ウラと可愛く配置されています。
こちらは去年の「ひじおりの灯」出品作。今年は2010年の灯ろうのうち一部を再点灯というかたちで、引き続き展示しています。
2年続けての展示となると、80日近くも外に出し入れしていることに…!
それでも日差しや雨風、湿気に負けず、画面がピンと張っているのには驚きです。
月山和紙のしなやかさと、表具師さんのプロの張り込み技術が作品をささえてくださっているんだなあ、と実感しています。
この灯ろうが飾られてある木村屋旅館さんの玄関には、旅館のご主人が好きで集めたたくさんの招き猫が置かれています。
その中には、震災の直後にお客さんが殆どいらっしゃらなくなってしまったのを常連のお客さんが気にかけて、木村屋さんに送った招き猫たちも多くあるそうです。
6月に取材に訪れた佐藤さんがリクエストされたのも、ずばり<招き猫>!
テキスタイルコース4年生の佐藤さんにとっては、「リクエストに応じて作品を作る」ことが初めての体験だったそうで、自分自身にとっても勉強になったとのこと。
福がたくさん肘折に呼ばれてきますようにと、願いが込められた灯ろうです。
『ひじおり ららら』 望月梨絵
ゑびす屋旅館さんの軒下には、大学院グラフィック領域を修了した望月梨絵さんの灯ろうが。
ゑびす屋さんのご住人はソプラノサックスの名手!
サックスをそのまま描いてはつまらないので、肘折の冬の伝統行事「さんげさんげ」でも使われるホラ貝と融合させた新しい楽器、名付けて〈ホラックス〉を創って欲しい、というのが望月さんへのリクエストでした。
山伏のような、異国の音楽隊のような。白い装束を見に纏った人々が、自在に姿形を変えるホラックスを演奏している様子が描かれています。
時間や空間を旅しているような、不思議な作品です。
美術館大学センタースタッフ/立花泰香
(写真提供:肘折青年団)