トークを振り返る「自分たちができることって?」
2011/07/27
第1回のトークを振り返ってみました。
「自分たちができることって?」をテーマに
青山ひろゆきさん(画家)と前田哲さん(映画監督)をお迎えし、
その時、その後、体験した、もしくは考えた、率直なお話をお伺いしました。
青山先生は地震の瞬間、東京外苑前で卒展の搬出作業中でした。その数日後、電車とレンタカーを乗り継ぎ、学生と山形まで戻ったそうです。
前田先生はその時、映画館にいましたが、居残って最後まで観たそうです。しかしその後、学生の安否確認に必死でした。山形と距離がある分、余計に不安な気持ちが募ったそうです。
前田先生はその後しばらくしてから、学生と被災地へ行き、現場を記録撮影しました。本当は子供たちに話を聞きたかったけれども、学生から「それは無理です」とたしなまれ、あきらめたそうです。
青山先生はしばらくしてから山形総合スポーツセンターで造形のワークショップを行いました。福島からの被災者だけでなく、山形市民も参加するものでしたが、それぞれが想いを託し、こいのぼりのうろこを制作しました。
「鯉」という字は「里」に「魚」。故郷福島への想いが込められています。
実は青山先生、最初はワークショップに躊躇したそうです。しかし「今、自分ができること」を考え、被災地に行かなくても「これならできるかも?」と思い直し、このワークショップの依頼を引き受けました。
洋画コースの鈴木くんは青山先生と一緒に「こいのぼりワークショップ」に参加したひとりです。
美大に入って「美術で何かできないか」をずっと考え続けています。
実は鈴木くん、1年生のときは前田先生の教養ゼミ生でした。今回前田先生から被災地での「似顔絵ワークショップ」を提案され、「先生、今はまだ子供へカメラを向ける時期ではありません」と進言した張本人です。
前田先生は「エンターテイメント」としての映画を撮るのがお仕事です。「今、自分ができること」は他にあるし、時期ではないと思い直し、「山形国際ドキュメンタリー映画祭」へ向けて学生と一緒に取り組んでいます。
学生からの質問。「地震が起こって、自分にも何かできると思ったのでしょうか?それとも自分は無力だと思ったのでしょうか?」
青山「最初は何をやっていいのかわからなかったし、ワークショップをやるにも手さぐり状態で、不安な気持ちを抱えたままでした。でも結果として、やってよかったと思います」
前田「まず最初に自分がやったことは、映像学科の1年生、2年生の安否確認でした。3,4年生は他の先生に任せました。それから、精神的なケアも自分ができる範囲で引き受けようと思いました」
学生からの質問。「再確認したことは何ですか?僕は津波の恐ろしさや、電気のない暮らしの中で星がきれいなことを再確認しました」
青山「福島の写真家から送られてきた写真をみて、自然の美しさと自然の再生力に感動しました」
前田「僕はひとり暮らしなので、家族など守るものがない人は弱いな、と痛感しました。
それから、小さな光は明るいと見えないんです。普段見えないものが今は見えるかもしれない。そう思って目を凝らしてほしいし、芸術で勇気を与えてもらいたいと思いました」
学生からの質問。
「TUAD mixing!でトークイベントを企画した和田先生は、なぜ3.11をテーマに選んだのですか?おふたりは対談をもちかけられたときに、このテーマについてどう思いましたか?」
和田「異なる分野の先生の仕事を紹介する展覧会を続けてきました。本当は第4回のトークで対談する田口先生と辻先生の展覧会を準備していたんです。でも展覧会予算が削減され、その代りトークイベントに切り替えました。
3.11をテーマにしたのは、私自身の中でそれが大きな意味を持つものとなったからです。いろんな先生とこの話をする中で、それぞれが胸中に抱えている3.11を自由に語り合う場を作りたいと考え、企画しました。
今回のテーマは『自分たちができることって?』です。自分ひとりではできないけれど、志を共にする人が集まれば、何かできるかもしれない。?(クエスチョン)にしたのは、それをみんなで一緒に考えたいと思ったからです。」
前田「対談の話があったとき、自分は具体的なことは何もしていないので、話す資格があるのかなと心配になりました。でもありのままを話せばいいと言われ、自分がやろうと思ってできなかったことも含めて率直に話そうと思ったんです」
青山「悶々としている人も多いだろうし、自分もそうだったので話そうと思いました。今やらなくても時期というものがあります。いつか次につながるので、今無理にボランティアに参加しなくてもいいと思いますよ」
学生からの質問。「極限状態になると人間はどうなりますか?」
前田「まず一番大切な人に一番最初に連絡するでしょう。人間の本性はそういうときにわかります。自分はこれから毎日を丁寧に生きようと思いました。それから人を本気で好きになろうと思いました。みんな、恋してますか?若いんだから、いっぱい人を好きになったほうがいいですよ」
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最後に。
見た目も職業も違うお二人ですが、私なりにふたりの共通点を発見しました。
それは「人を幸せにすることを仕事にしていること」です。
エンジェルを描く青山先生と、映画で人を笑わせたり、楽しませる前田先生。
これからも頑張って「人を幸せにする仕事」を続けてください。
本日はどうもありがとうございました。
企画・ナビゲーター:和田菜穂子(美術館大学センター 准教授)
**トークの全記録はきちんと文章化する予定です!しばらくお待ちください。