トークを振り返る「ヒトとモノの記憶」
2011/08/10
第2回のゲストは、藤原徹さん(修復家)と原高史さん(現代美術家)のおふたりでした。
学科が違うと、先生方のお仕事を知らない学生もたくさんいます。
まずはプロフィール紹介から。
スライド写真を交えながら、先生方のお仕事を紹介していきました。
最初は藤原先生。
個人で制作したもの、そして修復家としての活動を紹介してくださいました。
会場を見渡すと、立ち見になるほど、たくさんの方が聞きに来てくれました。
なんと藤原ファンは30分前から最前列の場所取りをするほど。
トークが始まると、会場のみんなは真剣におふたりのトークに耳を傾けています。
原さんはグラフィクデザイン学科の先生ですが、油絵科の出身です。
震災後、メンタル的に参ってしまい、制作が困難になってしまったそうです。
でも海外への出品が迫っていたため、一生懸命向き合い、努力したそうです。
「ドラゴンボールでも、つらいときは《元気玉》取り出してがんばるでしょ?僕もそんな状況で《元気玉》かき集めました!」
シリアスな話なのに、笑いを交えながらつらかった心境を語ってくれた原さん。
先生だって普通の人間なんです。つらいときだってあります。
いつもは元気いっぱいで、学生の前では決してつらいそぶりは見せないけれど、本当はかなり参っていたようでした。
あとから提出してもらった感想レポートを読むと、正直に人間らしさを見せてくれた原さんに共感した芸術系の学生が多かったです。
藤原先生は独自の《美学》を語ってくださいました。
「渋谷のスクランブル交差点では、最初の一歩は少し混乱します。でも自然に流れが出来てくるものです。みんな自分でちゃんと流れを見つけて、その流れに従うでしょう。震災後の今は、そういう状況なんじゃないんですか?」。
「ヒトは嘘をつくけれど、モノは基本的には嘘はつかないんです」。
たしかにおっしゃる通りです。
ヒトの語る言葉に耳を傾けてプロジェクトに取り組む原さんに対して、
モノが語る何かを掬い上げるのが修復家としての藤原さんのお仕事です。
それが身体に染み渡っているからこその発言。
重みがあります。
トークイベントも終盤に差し掛かり、
いい感じで日が暮れてきました。
会場からのコメントです。
「わたしも先生方の話を聞きながら、自分はその時どうしていたか考えていました。」
「私は塩釜市の出身で、一日一日を精いっぱい生きてきました。被災したおじいちゃん、おばあちゃんと一緒に暮らしながら、自分と家族のために何ができるかを考えていました」
と涙ながらに心境を語ってくれた学生。
トーク後、
「話すことで気持ちに整理ができたし、少しだけすっきりしました」と言ってくれて、私もほっとしました。
トークイベントが終わり、ブラインドを開けると、パープル色の夕焼けが・・・・
池の水面に反映した幻想的な世界が広がっていました。
まるで被災者の鎮魂を祈るかのような夕焼け。
一生忘れない景色です。
企画・ナビゲーター:和田菜穂子(美術館大学センター)
*トークの全記録は、後程UPします!