晩秋の北陸道を新潟県から石川県の南端まで走った。
車窓を眺めていてはっと驚いた。平野が緑のじゅうたんに覆われている。
一面、黄緑色。ちょっと黄色みがかったところは稲刈り直前の田んぼのようにも見える。そして所々に緑の濃いところがあって、こちらは減反の麦が作付されている。落葉樹の紅葉と植林のスギの緑がコントラストをなしている山と、田んぼとが対になっていて面白い。
北陸では8月下旬から早生の稲刈りが本格化する。9月半ば、台風シーズン直前にコシヒカリを刈り取る。10月には切株から「ひこばえ」が成長し、やがて結実しない稲穂が一斉に立ち上がる。ちょうどそんな田んぼが絨毯のように広がって初秋の稲田のように見えたのだ。子供のころ、稲刈り後、広大な空き地となった田んぼでよく遊んだ。ひこばえが伸びきった頃には天気が崩れ、やがて冬を迎える。そして湿気の多い雪が稲株もろとも腐らせてくれる。
ひこばえは根で年を越す多年生野生稲の遺伝子の存在を物語る。以前ラオスで現存する野生稲(多年生と一年生)をみたことがある。多年生は池の様な所でススキのように群生し、乾季には干上がって枯れるが、雨季になるとまた芽をふいてくる。水田に適応したイネだ。
山形ではそんな風景があったことを忘れていた。内陸では刈取り時期が遅く、冬の到来が早いせいか、穂のついたひこばえはあまり見ない気がする。
晩秋から初冬の稲田にもそれぞれの土地の風景があることを思い起こさせてくれた。