歴史遺産学科

歴史/考古/民俗・人類
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2016-08-31

ラオスに行ってきました!・・・民族考古学スタディ・ツアー

滝あそび

 8月20日~28日に、ラオス・タイで実施した歴史遺産学科の国外研修(8泊9日)の様子を紹介します。

 

 ラオスは東南アジアの大陸部、インドシナ半島の内陸部に存在する農業国です。国土の面積は日本の2/3ほど。70%が高原や山地です。国民の6割が篤く仏教を信仰するラオ族で、平地部で暮らし政治的、経済的優位にあります。一方、高原・丘陵地等に散在し、先住民ともいわれる多様な少数民族も暮らしています。自然信仰、アニミズムの伝統が顕著です。

 

 このスタディ・ツアーは、精霊信仰が息づく少数民族の村を訪ね、自然と共生する持続的資源利用の暮らし、その知恵や技を学ぶことを目的に企画されました。住民の日常の手仕事を体験しながら、観察、実測、ヒアリングをして民族誌調査の手法も学びます。

 この企画は歴史遺産学科がラオス政府(情報文化観光省・文化遺産局)に申請し、その許可を得て実施されました。参加者は学生5名、教員2名、副手1名、タイ人のアシスタント(通訳)2名、ラオス情報文化観光省の職員1名、の総勢11名。

 今回訪ねたのはベトナム・カンボジア国境に近いラオス南部、アッタプー県にあるO族が暮らすC村です。O族は県南部の山麓に16の村に分かれて暮らしています。言語は巻き舌を多用するO語。近年は学校教育により若者はラオ語を話します。外国人旅行者の立ち入りが制限されているため、同省職員随行のもとでの調査が許可されました。関係者に深く感謝します。

 

 

 C村はベトナム戦争時に作られたホーチミンルート(北ベトナム政権が南ベトナム民族解放戦線を支援するためにラオス国内に設けた補給路、現18号線)沿いにあります。県庁所在地であるアッタプー市街から毎日1時間余り、雨季の雨でぬかるんだ凸凹道を通いました。

 村には約120世帯、500人が暮らしています。遠い先祖は山地を移動しながら暮らしていたとの伝承があり、インドシナ戦争時までは戦乱を避ける意味もあり、ボーラヴェン高原の急斜面に住んでいました。革命後の1978年ごろ、政府の少数民族政策により山から下ろされ、山麓に住み始めました。その後、2,000年代に人口が拡大し、18号線よりに分村するなど、現在では3地区に集落が分かれます。

 

 主たる生業は水田稲作(雨季のみの単作)です。ラオスやタイ東北部(イサーン)は灌漑水路をもたない「天水田」が一般的ですが、ここでは村の背後にそびえるボーラヴェン高原の崖に幾筋もの滝が見えるように、雨季は山から豊富な雨水が流下し、畦越しの自然灌漑が可能となります。前者では天水田に適したもち米が主体ですが、O族はうるち米を作り、伝統品種を20近く持っています。肉、豆類をほとんど食べないため、タンパク質は魚類から摂ります。そのため水田漁業が盛んです。田んぼ一枚一枚に大きな養魚池ルンパ(下の航空写真)があり、雨季中に入り込んだ魚を養育し、水が枯れる乾季まで食べ続けます。

 ラオ族の天水田では「産米林」と呼ばれるたくさんの樹木が林立するのに対し、ここで樹木はが少ないのは、水田漁業との関係が強いと思われます。水田というと広大な稲田が広がるイメージが強い日本人にとっては、むしろ前者の方が奇異に映ります。ボーラヴェン高原では陸稲の米作りも見ました。トウモロコシと混植する「山の田んぼ」はもっと不思議だったかもしれません。自然環境に応じたそれぞれの稲作の風景をみることができたのではないでしょうか。

 

 

 ところで、18号線沿いには仏教を信仰し、もち米を食べるラオ族のP村があります。C村とは集落が接するばかりでなく、その境に両村の統合小学校ができ、現在では両民族の子供たちが仲良く学んでいます。習俗、習慣、文化伝統の異なる集団同士ですが、経済的交流も盛んです。

 

 今は雨季。通っている間も毎日夕方から夜は雨でした。水田は7月に田植え(・直播き)が終わり、直播田の草取りやプランテーションへの出稼ぎも終わって骨休めの時期でした。とはいえ、村の中では屋敷や田んぼの竹塀(水牛除け)の修繕、魚とり籠などの竹細工、思い思いの仕事がなされていました。わずか4日足らずの滞在でしたが、学生たちは壷酒造り、敷物編み、筌づくり、米の麺づくり、昆虫の調理、薬草採集などを体験し、調査しました。英語の通訳を介し、ラオ語と発音できないO語に混乱しながらも必死に記録をとりました。住民たちとの数々の触れ合いは貴重な異文化体験になったのではないでしょうか。

  村長さんはじめ、ずっと同行してくれたSさん、体験、観察に協力してくれたそれぞれの世帯の方々、村民のみなさま、ありがとうございました。

 

 村上春樹は言います。ラオスの「風景には匂いがあり、音があり、肌触りがある。そこには特別な光があり、特別な風が吹いている。何かを口にする誰かの声が耳に残っている」。

 

 いまでも、村の子供たちの笑顔とにぎやかな歓声、一緒に水遊びをした滝の音が耳に響きます。

 

山中の滝を目指して歩く

ボーラヴェン高原の崖には幾筋もの滝が流れ落ちる。田の畔道を歩き、滝を目指す 。

 

水田1枚1枚にルンパという養魚池がある

タンパク質を魚に依存するO族独特のルンパ(養魚池) 一枚一枚の水田にみえる黒い丸がルンパ

 

同世代の子たちで川遊び

村はずれの川はどこも子供の遊び場だ。笑顔がはじける

 

カプーン(麺)を作る

学生たちがうるち米を搗いて麺(フォー、ここではカプーンという)を作る 

 

Wat Peu

 世界遺産ワットプー(チャンパサック県にあるアンコール王朝の寺院遺跡) ちょっと気取ってみました・・・

 

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