気になる石鳥居があって高畠町の三条目を再訪した。相森山の参道に立つ熊野神社の鳥居だ。山頂に立つ一つの社殿を両裾にある二つの集落が祀る。いまでは春と秋にそれぞれ分担してお祭を行う。両集落からのぼる参道の尾根道には対峙するように2基の石鳥居がたつ。ともに宝暦年間の銘がある。
調査し終わって山を下りると、近くの小屋から物音がしたのであいさつがてら訪ねてみた。会社を退職後、故郷の村に帰ってきた旦那さんがひとりで大工仕事をしていた。子供の頃、鳥居をくぐって山頂で遊んだ話等を聞かせてもらった・・・・
挨拶して別れた後、学生がこの石鳥居をひとりでスケッチしていた。小一時間、ほかの鳥居を調査して戻ってくると、旦那さんがおもむろに一枚の絵を持って現れた。学生の後ろ姿を見ながら、気にかけてくれていたようだ。
この絵は埼玉に住む自分の妹が、6年前に帰省した際、姪っ子の夏休みの宿題に一緒に家の前で写生したものだという。いまはもう伐採されてしまったスギの木も描かれている。さくらんぼの木やラフランス畑は今も健在である。
私たちが気にいったこの風景を、同じように故郷の原風景として愛着を持った一つの家族の物語に触れたような気がした。
小屋の中の物音に気づかなければ出会うことのなかった絵画。
まちを歩いていると、こんな偶然にときどき出会う。
引き寄せられるように出会ってしまう。
そんな思いをして育っていた学生も少なくない。
感度のいいアンテナをあげていれば、情報は向こうからやってくる。