●NB村
メコン川に沿って50分車を走らせNBという村に着いた。
ここはカムワン県では有名な窯焼きの村である。100名余りの男性がクロック(搗鉢≒擂鉢)を作っている。電動ロクロを使う人もいるが、伝統的には回し手と挽き手が2人で組む手回しロクロである。昨年訪ねたルアンパバン・チャン村のように夫婦の場合、男二人で成形する場合がある。
これだと何の変哲も窯村なのだが、ここが変わっているのは、男性が土器の水甕モーウナム(・小型鍋モーケン)を野焼きで作っていることだ。土器は本来女性の仕事のはず。なぜ、ここでは男性が行うのか。
現在、土器を作れる男性はもう2人しかいない。その一人、Tさん(62歳)のお宅を訪ねる。ことしは稲刈りが終わったばかりでまだ作っていない。粘土も用意していないということで後日訪ねる約束をする。
田の中を15分ほど歩いて窖窯を見に行った。稼働中の窯は村はずれに10箇所ほど点在しているという。不思議に思った。なぜか成形場所の近くにまとまらないんだろうか?
答えは「アリ塚」を利用して地下式窯を築くからである。東北タイのダーンクウィアンや北タイのムアングンなど、古くはみなアリ塚に窯を築いたと聞かされていた。森や田の産米林に形成されるアリ塚は土が硬く天井が丈夫だからだという。ここだと3年~10年はもつよ。ほかにも地下を掘る労力や雨季対策などが考えられる。冷却中の窯を見せてもらった。チャン村と違って、クロックは還元がかかりよく焼きしまっていた。
午後はタケークから一路東へ、奇岩が林立する石灰岩の山並みを縫うように走った。この先はベトナムである。60kmほど走るとヨモラートという小さな町に着く。さらにSL村を探しダートを走る。途中橋が壊れており迂回する。
ようやくたどり着いたが、土器作りは10~15年前に途絶えたという。かつて作った経験のある女性が3名いた。水甕モーウナムはやたら胴長である。
道具はもうないから今は作れないが、用意して見せてあげるからまたおいでと。う~ん…….