岸には雪がちらちら。
学生たちに負けじと、初冬の川を歩いた。
宮城県境にちかい尾花沢市の宮沢地区に「登録有形文化財」中沢川砂防堰堤群がある。堰堤は練り積み、付随する水敲きと護岸は空石積みである(水敲き1箇所はコンクリ)。
大正2年の大水害を契機とし、同5年(1916)に山形県初の砂防事業として整備された4つの堰堤と護岸石垣群である。地元中刈の名士大貫常蔵が尽力し、足掛け5年かけて事業が完了した(三浦幹雄「宮沢地区公民館だより」)。現地には記念碑がたてられ、下流の農業用水の取水口もあることから、地区の人々により大切に守られてきた。
近年、その一部が被災し、復旧工事が必要となっている。防災と文化財の保存をどう両立するか、知恵が問われている。
今回崩落によってはじめて堰堤の内部、護岸石垣の背面構造(胴には木端石、背面には栗石)が明らかとなった。近世後期以来の在来石積み技術と、外国の砂防技術を導入した近代土木技術がミックスして作られた構造物。登録された構造物以外にも河床に段差を設けるなど、自然と調和した造作もあるように感じた。