誰にでもお気に入りの場所があるはずだ。
ここは金沢21世紀美術館「タレルの部屋」
自然の光と空気と色の変化をたっぷり楽しめる部屋。
ぼーっとしていても居心地がよいのだが、春先はゆっくりと動く陽だまりに身を置き本を読むのがいい。時折、目を壁に向け、部屋に入ってくる見学者をウォッチングする。
開館以来、2か月に1度ぐらいペースで来ている。2時間ぐらいいたこともあれば、1分いないこともある。時間があるとつい足が向いてしまうお気に入りの場所だ。
壁と腰掛けは「戸室石」という地元の安山岩。金沢城の石垣石材だ。やわらかな赤戸室の質感が、白い壁や青い空といい調和をみせる。
岩手県の県庁所在地−盛岡。その中心に位置するのが盛岡城。秀吉の奥州仕置の後、慶長3年に南部氏が築城した本格的な織豊系城郭です。
城は北上川と中津川、雫石川が合流する自然の要害にあり、豊富な花崗岩を利用した総石垣づくり。元和3〜5年の大規模な拡張整備でほぼ現在の縄張りが完成しました。このときの石切丁場は城の中にあり、石垣石に利用された花崗岩の巨石がいまでも城のそこかしこに顔を見せます。
このような城のなかに石切丁場があるのは、甲府城、和歌山城などに例があります。
盛岡城にはそのことと関連する興味深い特徴があります。それは「双子石」の多さです。双子石は前に甲府城のところで紹介したように、もともとひとつの石を矢で2分割し、その割面をそれぞれ表にして積んだものです(正面を向かない場合もある)。盛岡城では元和の拡張のときに、本丸四隅の隅角部などで、角石にこの双子石がふんだんに使われているのです。巨石が豊富にあったからこそでしょう。これはその場で石を割り、積んでいる証拠とみられます(二つは連続して積まれている)。石切丁場が城から離れている普通の城ではそんな例はありません。
盛岡城を見学する方は双子石探しをしてみてはどうでしょうか。半日歩いて20個ぐらい見つけました。
江戸中期の石垣修理の際には、さすがに城の中から採掘せず、郊外の日陰山というところから、冬にそりで運びました。果樹園の中に矢穴石が点在しています。雪の岩手山がとってもきれいでした。