7月22日(金)歴産カフェもいよいよ最終回を迎えた。今日のお題は、高校生たちにもなじみのあるジブリ・アニメ「もののけ姫」。ふだんは「ああ、面白かった」とストーリーを楽しんで見ていただけだったと思いますが、この授業では画像や本を見ながら、作品にちりばめられた「民俗学的」意味、メッセージを読み解いていくというものでした。
今回は日本の東西の文化とその関係がどのように描かれているか?
初対面の生徒同士、慣れない話し合いをしながら意見をよくまとめて発表してくれました。東西の武器や刀の違いなど、結構、細かいところまで見ているなと感心する意見もありました。
高校生たちはアニメで西と対比して描かれる「東の土着の文化」に自分たちのルーツを重ねながら、同時にネガティブなイメージを抱いている印象がありました。しかし、「進歩」や「発展」という価値観の基準を問われたとき、何人かはすこしうろたえたように見えました。
ジブリ・アニメと歴史学、ジブリ・アニメと考古学、ジブリ・アニメと人類学。まだまだ続編が期待されます。
歴産カフェは、山形の、東北の歴史や文化を素材として、歴史遺産を学ぶ面白さを体験する場です。
驚きや発見は学びの原点。
目を輝かせてくれた高校生たちへ。ぜひ次回、また会いましょう!
東北芸術工科大学歴史遺産学科・山形県高等学校社会科教育研究会日本史部会村山支部の教員一同
7月15日
「ムカサリ」を知っている人?シーン…。 知らない人?…全員が挙手した。
やはり若者にとっては縁遠いことばだろう。
今回は県立博物館が所蔵する「ムカサリ絵馬」を実際に観察し、その絵がなにを描いているか考えるところから始まった。まず絵馬の取り扱い方の注意点を学び、実際に資料に触れて熟覧した。
昔の結婚式の絵であることはすぐわかったようだ。花嫁らしき女性が文金高島田で角隠しを被っている。さて、そこからがむずかしい…
ムカサリはやまがたの方言で結婚式のことを言う。ムカサリ絵馬は、未婚のまま亡くなった子供が挙げる結婚式の様子を絵馬にして神社に奉納したものを言う。この風習は山形県村山地方が盛んで東北地方に散見されるという。
亡き子への親の思いだけでなく、戦前の人間観、家族・社会観、霊観が顕著に表す風習で、実は現在も細々と続いていることを知った。ウェディングドレスの絵馬もあり、夫婦二人のみが描かれる。そこには結婚観や家族観など社会の変化が読み取れるという。若者にとって「結婚」や「死」という身近で普遍的なテーマだったせいかみな真剣に話を聞いていた。
そして、山形独特かのようにいわれるムカサリであるが実は、冥婚や霊婚といった形で、東アジアで2000年以上続いてきた習俗であること、ひろく世界を見渡すとアフリカにも存在することが説明された。民俗学や人類学のローカルとグローバルを行き来する面白みが伝わっただろうか。
スタッフや見学の学生たちが絵馬の開封や梱包を手伝わせてもらった。いい経験になったかな。
最後に、高校生たちも自主的に机の整理整頓、ごみの片づけを手伝ってくれるようになった。
あと1回で終わりと告げると「また、この続きやらないんですか?」とうれしいことを言ってくれる・・・。ありがとう
7月2日 山形市内まちあるき
ふだんなにげなく過ごしている自分たちの町をみんなで歩いてみよう!という企画。
1年生全員と5名の教員が町に繰り出しました。
午前中は県立博物館、明治の病院建築である済生館、整備が進む山形城跡を見学。
午後は5つの班に分かれて思い思ひに集合場所の「文翔館」を目指しました。
私の班は路地をうろうろあるきながら近代建築の保存と活用をみてきました。路地にはコールタールやクレオソートが塗られて現役で頑張っている木製電柱が何本もありました。本町あたりでは江戸初期の絵図にある用水が明治に石積み修理されながら今も開渠となって流れています。七日町には近年町並み整備で再生された御殿堰があり、あわせて往時の記憶を伝えています。
お城を出て最初に目に留まったのが木造の教会建築。それからは回り道をしながら大正ロマン漂う建築をみながら目的地を目指しました。山形市内にはすでに知られている近代化遺産だけでなく、路地のあちこちに江戸初期からその風景をかえてきたまちづくりの遺産が数多く眠っています。そこに価値を与え、保存活用しながら新しい町のすがたを見据えていくのが次世代を担う若者たちの仕事だと思います。西村写真館のむかいで話を聞いた元豆腐屋のおじいさんは3代前からのことを語ってくれました。モノは残りますが「人の記憶」は消えていきます。有形の遺産だけでなく、人の記憶という無形の遺産も未来につなぐためにたくさん話を聞きましょう!
まちあるきの楽しさは、思わぬ発見のよろこびです。目がたくさんあればあるほど気づくことも多いのです。
目的を決めて歩くもよし。ひとりで思索にふけりながら歩くもよし。大勢でわいわい歩くもよし。いずれにしても予期せぬモノやコトに出会うはずです。
そんな面白さの一端は伝わったでしょうか。
先日の仙台オープンキャンパスで「ブラタモリ」の大ファンだという高校生が訪ねてきました。
地形や樹木などの自然を見る目、建築や水路などの人工物を見る目、それに歴史の知識が加わると「まちあるき」は病みつきになります。そんな楽しさについて語り合いました。高校生にしてはちょっと早熟じゃない?と思いつつ。