福井県の笏谷石(しゃくだにいし)といえば、北陸を代表する凝灰岩石材。古墳時代の舟形石棺、中近世のバンドコ(暖房具)。近世には北前船によって石材が日本海側に広く流通した。鶴岡には慶長年間に建てられた立派な鳥居がある。
この丁場(七つ尾口)は8年ほど前に石切りが停止し、坑道はふさがれてしまった。いまはわずかに酒屋さんの貯蔵庫として使われるのみ。湿度・気温が年中安定しているからだ。大谷とちがってここは17℃前後と高い。
数百年の歴史が刻まれた坑道を石工さんの案内で奥へ奥へと進んだ。トロッコのレール、30mの竪坑から石を引き上げたウィンチ、崩落止めの松の丸太、採掘者の墨書・・・・
ところどころにみられる落盤。
つわものどもが夢の跡。石切り場は日本の近代化を象徴する遺産のひとつである。どう残し、活かすか。わたしたちに課せられたテーマである。