歴史遺産学科

歴史/考古/民俗・人類
*
2010-08-14

調査の中間まとめ


調査成果(中間報告)

今回の調査は発掘を行わず、開口した(過去に発掘された)横穴式石室墳の現況測量・実測のみを行った。所見は表面観察によることをあらかじめお断りしておく。

106号墳(飯塚北支群)
西斜面裾に作られた直径11mの円墳。
両袖式の横穴式石室。羨道は未発掘で保存されている。玄室は調査済で床面に近年の流土が堆積。
玄室長3.3m、玄室幅(中央)約1.8m、奥壁・玄門約1.5m。玄門幅0.6m。床面プランは側壁が緩やかな胴張りを呈する。石材は凝灰岩質岩。小型不整形なものが多く横目地の通りは悪い。随所に高さ調整の長手積み平石が入る。基底部に大型の石を用いる傾向がある。奥壁は縦長の鏡石1枚。高さ約1.7m。
奥壁の入角は側壁側石材が奥壁の奥へ入る。
玄門は羨道側壁から内に飛び出すか?板状の閉塞石らしき石材が玄門にあてられている。

176号墳
丘陵南斜面の上部に位置する直径約10mの円墳。単独で群をなさない。
玄室は調査済。羨道は未調査。
側壁の石材は節理の発達した泥岩が主体。まぐさ石の段で横目地が通る。石材は平面性があり積みはしっかりしている。基底石に大きな石材はない。奥壁は大型の2石で高さ1.5m。
玄室長2.2m、玄室幅(中央)約1.5m、(奥壁・玄門側)1.1〜1.2m。玄門幅0.6m。玄門ラインは玄室主軸に直交せず、東に振れる。石材は106号墳も含め、すべて自然石で加工はない。奥の入角は隅合わせ。
床面プランは106号墳の側壁が緩やかな胴張りを示すのに対し、本墳の側壁は直線的に折れをつくり、全体として八角形状を呈する。墳丘の北側には列石が一部顔を出しており、墳丘表土にも角礫が多数見える。高畠町の終末期古墳と同様、墳丘は礫積みであることがわかる。前庭部付近の表土からは須恵器大甕片2点が出土した。

昨年まで調査してきた高畠町の横穴式石室墳と比較すると、構築技術の上でいくつかの共通点・相違点が明らかとなった。
相違点の多くは石材資源の違いに起因する可能性が高いと考えるが、今後とも調査を進め、検討していきたい。

戸塚山古墳群ではこれまで横穴式石室の実測図がほとんどなく、その特徴が明確になっていなかった。今回の調査は保存・研究のための基礎資料を整備したという点で意義あるものといえる。

最近の投稿

最近のコメント

アーカイブ

カテゴリー

メタ情報

東北芸術工科大学
TUADBLOG