朝から事前に約束しておいたP村のKさんを訪ねた。
ここの土器は樹液を塗るものがある。フィリピンやベトナム南部に事例があるが、タイ・ラオスでは見たことが無い。いつ、どのタイミングでどんな方法でやるのか興味深い。今日は午後15:00から野焼きをするというのでこれが見れると思い楽しみにして来た。
伝統器種はモーナム、モーケンの二つだけ。モーナムは4サイズほどあり、薬やハーブを煮出す鍋、タンブン容器として使われている。本来の水甕としての使用はもうない。モーケンは骨入れ容器、小型の取っ手付きは主にレストラン卓上用のスィンチュム(トムヤムセット)として使う。
非伝統器種として、七輪の灰落としリンタオや植木鉢ガターン、モーナム形の貯金箱をつくっている。
午前中は成形を観察した。
基本的な方法は、タイ東北部と同様に、円筒原型から叩きによって成形する。ロクロはChane村と同じコマ型の一木造り。円筒原型から口縁部を水挽きする際に、回転台として利用するのみである。どうみても、窯村から新しく導入された道具としか思えない。
叩き板マイ・プップは珍しく竹製だ。肉厚の竹を使い断面がかまぼこ状を呈する。丸い部分で頸部のくびれを上手く叩きだす。器面を平滑にする叩き板は木製。当て具は石。
観察の合間に各種土器の寸法を測ったり、道具を実測して過ごした。
昼食はこの家で食べた。表通りからは全く見えない裏庭がレストランでナムカーン川に面したいいロケーションである。大学生の男女が仲良くトランプで盛り上がっていた。
午後からは早めに野焼きの準備が始まった。Kさんの息子が材料の竹を粗割りしたり、藁を集めたり準備する。我々が燃料の重さを測る際も献身的に協力してくれた。
驚いたのは、リンタオやガターンは事前に七輪で予備焼きをすること。大型のモーナムも中にヤシの葉を入れて火をつける。割れを防ぐ措置である。お婆さんの時からやっているという。普通は雨季のみの措置と聞いて安心した。
土器のセットが終わり、こちらの温度計も設置でき、予定より早く14:10点火した。
主熱源は竹。稲わらによる覆い型野焼きで灰を被覆材として少量かける。点火後、操作はせずほっておく。竹は40kg、藁は24kg。野焼きででた灰は畑で使用する。
17:00にみんなで焼けた土器を仕舞い、一日の仕事が終わった。
ところで樹脂はいつ塗るの?明日だよ!
普通は野焼き直後の熱い土器に塗ってコーティングするのではないのか・・・・。ともあれ、明日も来るしかないということになった。
土器は娘さんが市場の販売店にもっていく。30個注文があって、2個割れたら28個もっていく。それでいいのだそうだ。
歩留まりを考えて余計につくるタイなどと需給の考え方が違うところが面白い。
この家の前の道路は近年整備され、その先に観光客がよく訪れる織物の村がある。道端に土器を乾燥させていたり、焼成中の煙を見て興味深そうにのぞきこむ人が後を絶たない。そのせいか、かつて40枚もあった叩き板(土器作りを止めた村人からもらったもの)はもう数少なくなったわよ!と。日本語で話しかけてきた男の人はここの大学の韓国人教授だった。この大学は韓国の支援により運営されてらしい。
夕飯をたべて宿に帰ると、W君がまたビールを飲んでいる。今日は女の子二人が一緒だ。ミーティングをしているとGさんが一人でこっちにやってきた。日本に興味があるらしい。彼女は中国国境に近いルアンナムターの出身。大学で経済を勉強している。もう一人のLさんはノンキャウ郊外の出身で経営を勉強していて伝統文化にも興味があるらしい。しばらく楽しく話をした。彼女たちはW君とともに飲みながら朝まで地べたで寝ていった。