3月の初め、みぞれ混じりの雨が降るなか、大きなスーツケースを抱えてバス停にたたずんでいた。待てど暮らせどバスが来ない。
もう20分も過ぎているのに・・・・・思い切って隣にいた女子高生に聞くと、とっくの昔に時刻は過ぎていた。そう私の時計が遅れていたのだ。止まっていればわかるのだが、私の時計は時々止まってはまた動く。たちが悪い。すぅーっと冷や汗が流れた・・・・。乗り損ねたのは空港へ向かう最終のバスだった。
今回はシンポジウムの発表があったので、その足で旅立つことにした。とある地方空港から羽田へ向かう最終の飛行機、これを逃すわけにはいけない。選択肢はなかった。タクシーを飛ばしてなんとか間に合わせたが、えらい出費だった。くやしい。
ここのところ旅ではトラブル続き。今回も幸先の良いスタートとなった。ともあれ、羽田発の深夜便はバンコクに向けて飛び立った。
スワンナプーム空港に降り立って、ムッとする暑さを感じるとスイッチが切り替わる。気温氷点下の世界からあっという間に30℃の世界に行けるのが不思議だ。深夜便は2列シートの通路側、右手の自由が利くB列席がいい。旅慣れた友人から教えてもらった。となりのA席に一人旅の若い女性が座った。横がおやじでごめんねと思いつつ、飛行機を降りてイミグレーションに並んでいたらたまたま隣に来たので、話しかけた。都内のS大学の2年生で社会学専攻だという。2回目の海外旅行で、初めての一人旅だそうだ。アユタヤとチェンマイを10日ほど旅すると。なんと大胆なと思って聞くと、高校時代にカナダに留学経験があり、その時に知り合ったタイ人の友達を訪ね歩くそうだ。英語には自信があるようだ。荷物を待つ間、たいしたアドバイスもできないが、少しタイの事情を話した。荷物をピックアップして、空港鉄道に歩いて行く後ろ姿がまぶしかった。Good Luck。
ここからラオス航空に乗り換え。待ち時間に一仕事できた。客が少ないと思ったら案の定、駐機場まではミニバンでいく。巨大なスワンナプーム国際空港の一番端まで連れて行かれた。サワンナケート経由、パクセー行き。トランジットのサワンナケートでは1時間ほど待たされた。めまいがするほど暑かった。もうすぐ1年で一番暑い時期を迎える。ここで客を乗せた飛行機は40分あまりでパクセーの空港に着陸した。
先発隊のいるアッタプーから4時間かけてOsanが迎えにきてくれた。西日が傾く市場の前のオープンテラスで夕食をとりながらくつろぐ。やっぱり飯がうまい!ビア・ラオ・ダーク!これが1本100円で飲める幸せ。しばし至福の時に酔っていると、背後の市場からもうもうとした黒煙が上がる。やがて消防車のサイレンが鳴り響く。そう火事だった。世の中いろんなことが起こる。