歴史遺産学科

歴史/考古/民俗・人類
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2012-04-22

ハラボジの語りに耳を傾ける−安東河回マウル


春休みに、以前から行きたかった安東河回マウルに行って来た。

2010年、慶州の良洞マウルとともに、世界遺産に登録された民俗村である。良洞マウルは2004年3月に民俗のK先生と一緒に行った。チャンドクテー(庭先の味噌甕置き場、10〜20の大小の甕が置かれている)にある古いタンジがほしくて、おばちゃんに懇願したら、中のテンジャンを別の容器に移し替えて譲ってくれた。しばらくテンジャンの匂いが残っていたが、今も我が家の床の間に鎮座している。

ともに朝鮮時代の氏族村で当時の農村風景や習俗をよく残している。ここはあの韓流スター柳時元(リュウ・シウォン)の出身地としても知られ、観光客に分かるように真新しい表札がかかっていた。

村は大きく蛇行するナクトンガン(洛東江)に囲まれるようにあり、両班(貴族層)から庶民までが氏族村を形成する。韓国らしく教会もある。路地を歩くと朝鮮時代を思い起こさせる風情はあるが、修理した真新しい塀はなじむのにもうちょっと時間がかかりそうだ。そんな路地に立つ欧米風の街灯はちょっと興ざめする。なぜ?

世界遺産効果で世界各地から観光客が押し寄せている。
伝統的な生活をしている村がそのまま世界遺産になったという点では日本の五箇山・白川郷とよく似ている。一度その現状を見ておきたかった。

村に入る前にガイダンスもかねた仮面劇の劇場がある。満員立ち見の盛況だった。

見終わると村の中をぶらぶら歩き、1軒の旧家に飛び込んだ。縁側に腰をおろしハラボジから話を聞いた。

自分は村の小学校、安東の中学、高校を出て、テグの大学を出た。それからソウル支庁で公務員の仕事を務め、定年してから村に戻ってきたという。村は昔は300軒あったがいまは110軒に減った。空き家もずいぶん多い。この家は築250年。さほど古いほうではない。村の伝統的な秋祭りは保存会をつくってなんとかやっているが、昔と違って見せる内容に変わってきたという。

世界遺産になっていいことあった?と聞くと「なんもないさ」という。よくよく聞くと、年1回の藁屋根の葺き替えや建物の修理は全部国がやってくれるのが助かるわ。
一番困ったことは?
観光客が中に勝手に入ってきて、敷地にある農具やチャンドクテーの甕の蓋をあけることだという。中にはテンジャンやカンジャンの味見していく輩がいるそうな。このお宅の門をくぐって最初に気付いたのはチャンドクテーが無いことだった。そういうわけでお母さんの家に全部もっていったそうだ。

ドキッとした。そんなことをする奴はけしからん…と思いつつ、身に覚えがないわけではなかったから。でも私は主に声をかけて許可を得てからやっているから・・・・
同様の苦情は観光公害として五箇山などでもよく聞く話だ。気をつけよう。

村では多くの家が民泊(民宿)できる。大きな部屋で100,000ウォン(8,000円ほど)何人で泊まってもいい。安上がりだ。小さな部屋だと4,000円ほど。日本の大学生も時々泊まりにくるそうだ。若者と語らうのが楽しいのだともいってくれた。

西日が差し込む縁側で、もちこんだマクワウリをかじりながらハラボジと長々と話しこんでしまった。夜通し語りたくなるくらい心地よい時間だった。
村を出る最終のバスに乗り遅れると駐車場まで相当歩いていかないといけない。あわててバス停に向かった。










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