歴史遺産学科

歴史/考古/民俗・人類
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2012-06-17

いい道具はうつくしい・・・


第9回高畠まちあるき。二井宿街道を歩く旅はようやく駄子町に入った。梅雨の雨が心配されたが今日もお昼前から青空が広がった。

今日一番興奮したのは「万力台」、次いで「藁打ち石」。

この万力は自転車店をはじめた現在の御当主Cさんの先代が購入されたもので、もう70年近く使っているらしい。屋外に設置してあるため表面は錆びているが、油はさされており普通に使える。

そして、ただの万力ではない。ここは高畠。近所の石工のYさんが高畠石と合体させて多機能な万力台に仕上げた。自転車のフレームの矯正などにも使えるように細工され、地面に埋め込まれしっかり固定されている。
現在の万力台は2代目。現当主が作業場を新築した際に、Yさんの息子さんが新たな石材で万力台を作ってくれたのだという。これまでもさまざまな生業と関わる高畠石のあり方を見てきたが、この万力台はわたしの「一押し」である。

江戸時代以来続く伝統櫛の作業台に「石馬」という多機能成形台がある。江戸前では土台は石製なのだが、庄内田川では重量感のある木が用いられている(昨年卒業した設楽さんの卒論から)。

万力台は普通は木だと思うのだが、ここでは石なのだ。そこが高畠らしくていい。土地の資源と伝統の道具をコラボし、大切に使い続ける人の姿がここにもあった。
自分が何に惹かれるのか・・・・。あらためて知る出会いだった。

Cさんのお爺さんはなんと「細越」最後の石工Cさんの父親と兄弟だったということが判明。お二人は越後西蒲原からきた船大工だったとのこと。意外なところで人と人がつながってくる。これもまちあるきの楽しみだ。

Aさんのお宅は現代的なコンクリ基礎の住宅。玄関脇に何気なく直径50センチぐらいの厚みのある石が置かれていた。
聞くと、これは15年あまり前に解体した旧宅の土間に設置されていた「藁打ち石」だという。地面から頭を10センチほど出し、残りは地中に埋めてあった。藁打ち石は縄ないなど、冬仕事に欠かせない道具である。
旧宅を解体した際、わざわざ掘りだして保存しているそうだ。石臼などもあった。引き込み線の元をカバーするのに陶製の酒樽(かつてはどぶろくを作っていた)を埋めているのも粋である。


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