歴史遺産学科

歴史/考古/民俗・人類
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2012-06-30

復旧はじまる


震災でダメージを被った二本松城跡の石垣。
いよいよ復旧が始まった。平成にはいってから解体修理して整備した石垣だった。おかげで地震に耐えた所がある一方で、持病の古傷(歴史的に何度も修理されてきた箇所)はまたしてもやられた。なんとか耐えたが寿命が縮まった部分も少なくない。これからの健康診断が欠かせない。
修理個所の解体調査では原因究明が第一である。

石垣は柔構造、ほんとうに生き物のようである。

法隆寺が世界遺産に登録される際、イコモスの委員は、この木造建築は何度も修理されてきていて真正性がないと疑問視した話は有名である。
しかし、オリジナルであることに真正性を求める「石の文化」に対して、朽ちることを前提に、適切な修繕を行い、資源を有効に使い持続的に作り替える行為こそに真正性があるという全く異なる価値観を提示して、登録にこぎつけた。
いまではむしろこのような有形の世界遺産のなかにある無形の価値の重要性が高まっている。石見銀山が登録されたのもそうだ。

近世城郭の石垣はどうだろう。
確かに石の文化遺産である。しかし、石垣は寿命のある記念物であり、日本の国土にある以上、地震や大雨は避けられない。石垣は修理し続けないと存続はしえない。江戸時代からそうやって今に残ってきた。
オリジナルの真正性を残すことを第一にしつつ、同時に修理し続ける姿勢や技術の中に、倫理や伝統技術の価値(自然と人との関係−自然知・持続可能な技・身体技法)を引き次いでいく真正性が求められなければならない。

震災で崩れた城郭石垣はいま一斉に解体・修理が始まっている。
一連の修理工事を通して、東北の人々が災害と共存しながら、歴史的遺産をどう引き継いで新たな社会や価値観を作っていくのかが問われているような気がする。

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