歴史遺産学科

歴史/考古/民俗・人類
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2012-09-01

戸塚山の夏が終わる


予定より1日延びたものの、本日所期の目的を達し、戸塚山175号墳発掘調査が完了した。

今年度の主な調査成果
?1/100地形測量図を作成した。直径約15mの円墳である。
2年生+1年生の活躍と4年生の指導があった。
?墳丘東側のトレンチで墳丘盛り土の断面と周溝を検出した。盛り土端は石積みで土留めしている。周溝上層から墳頂部で破砕されたとみられる須恵器大甕等の破片が多数出土した。
?横穴式石室の実測図を作成した。玄室長3.5m。戸塚山では最も大きな石室の一つ。戸塚山タイプ石室の石積みの特徴が明らかになった。石材は凝灰岩質砂岩と頁岩の使い分け。
?前庭部調査区で羨道前面の石積みを検出した。大型石材3段積みで直線的。羨道入り口部には石敷き面(墓道?)が存在する。石敷きの西側から須恵器甕がつぶれた状態で出土した。同時に出土した須恵器杯から築造時期は7世紀後半と判明した。羨門部に伏せられていた杯は8世紀初頭のもの。時期差があり、追葬時のものか。

8月6日に始まった今年の発掘調査。これほど暑い夏はなかった。雨が降ったのはこの間、わずか10分ぐらい。

異例はもう二つ。調査中に現地説明会がなかったこと。毎夜資料作り追われることはなかった。現説は、これから始まる米沢市教委の発掘調査と合わせ、10月に合同でやることになっている。
そして、上記に関連し、最後の土のう祭り(埋め戻し)がなかったこと。やや盛り上がり(異常な興奮・錯乱状態?)に欠けた感はあるが、最終週は早出や遅仕舞いでささやかな土壇場を迎えた。

現場は4年生が指導的役割を果たし、各調査区担当の3年生の仕事を助けた。期間中皆出席の2年生が3年生と切磋琢磨し、いい刺激になった。そして1年生も序盤、中盤、終盤、それぞれの段階でかけがえのない人材として調査に貢献した。少人数ながらいいチームワークだった。

発掘現場の記録は、写真実測や3D計測、トータルステーション全盛のご時世である。そんななかで我々はあえて手測りの実測を行う。方眼紙をみるのはもう嫌というほど石の図を描いた。手測り実測は1点1点の石や土器片と対峙する作業である。この果てしない繰り返しの動作がモノを観察する、仮説を立てる時間なのだ。
現在の発掘現場では記録の効率化の影でそんな時間が失われている。図面や遺構の上に滴る汗、目にしみる汗、ひたすら石にコンベをあてた夏を忘れないでほしい。






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