歴史遺産学科

歴史/考古/民俗・人類
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2013-11-28

熊本城にて

旅行口コミサイト:トリップアドバイザーが選ぶ、行ってよかった城の№1は「熊本城」だという。築城400年祭の平成20年度は観光客220万人余りを集め、その後減ったとはいえ昨年度は約160万人が訪れた。年間総入場者数でも世界遺産の姫路城や二条城、大阪城、名古屋城の上を行っている。

観光客は日本人だけではない。中国人、韓国人、タイ人などアジアを中心にたくさんの外国人の姿を見ることができる。

 

国の特別史跡「熊本城跡」ではここ15年で本丸御殿など7つの建造物が復元され、現在は馬具櫓と平左衛門丸の塀の復元が行われている。城の象徴ともいえる天守(模造RC造)は1960年につくられた。それまでは誰でも天守台の石垣に登れたという(委員長談)。扇の勾配を実感できたわけだ。熊本城の慶長初期の石垣は進入角が45~50度と浅く、中ほどまで簡単に登れるが、「ノリ返し」のある上部では直立してロッククライミングのようになる。

ここは石垣だけでなく、宇土櫓をはじめ11棟の櫓、ほかに門や塀、たくさんの重要文化財建造物が魅力を高めている。これに先の復元建造物を加え、全国各地で進む平成の築城ブームの最先端を突っ走っている。

しかし、この2月、復元整備の根拠となる調査や研究、体制が不十分であると文化庁からクレームが付き、市は仕切り直しすることとなった。今回はその1回目の会議だった。

地元の経済界や市民(観光プロモーションが専門の人もいる・・・さすが熊本)、様々な研究分野の人々の意見を聞きながら事業が進められる。

  

 

ところで日本人はなぜこんなに城が好きなのだろうか?

 

わたしは城マニアではないし、仕事以外で行くことは少ない(しいて言えば石垣マニアかもしれないが)。

確かに城跡は、観光地が共通して持つ、壮大さ、美しさ、静けさ、古さ、珍しさなどを併せ持つ。熊本城の大きな魅力である石垣もこれにあてはまる。このほか日本人が城跡が好きな理由で大きいのは、地域性とストーリー性ではなかろうか。

多くの日本人は身近な場所に「城」をもっている。いつの頃からか定住性が高くなり、生まれ育った土地の記憶に深く思いを寄せるようになった。地域アイデンティティーを記念物や郷土の英雄に託するのである。自分の「城」とよその「城」を比較してそのありかを知る。

戦乱の時代に城を舞台に繰り広げられた物語は近世以降多くの書物に記録され今に伝えられてきた。今の戦国武将ブームはゲームや漫画から始まったかもしれないが、それは昔からずっとあった。死が今よりもはるかに身近だった時代に、生きる力をみなぎらせていた人々を憧憬するからなのか。血沸き肉躍る、下剋上や国盗りのスリルや人間ドラマに興味をそそられるのか。人の命が軽く扱われ、残虐な人間の本性がむき出しの社会だったことには目をつぶりつつ・・・

 

来年の大河ドラマは「黒田官兵衛」。たまたま今年、姫路や中津や福岡と官兵衛ゆかりの城を見て歩いた。官兵衛ほど伝説逸話の多い武将も少ない。どんな脚本なのか。どんな人物像を描くのか。現代社会を映す鏡となるはずだ。

大河ドラマは昔「天下御免」というのを見た記憶があるが、それ以降まともにみていない。さてどうしようか。そんなことを考えながら、城を歩いた。

 

 

 写真は銀杏城の異名を持つ熊本城。葉が黄色く染まる。古城(第一高校)の石垣、枡形門を入る学校の正門。野良猫軍団にがんつけられる。

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