歴史遺産学科

歴史/考古/民俗・人類
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2014-08-30

第2回たかはた石工サミット、瓜割石切山祭り同時開催

 

往年の石工6名による座談会(瓜割山石切丁場)

 

 

何ともいえず楽しい一日だった。

 

 天気に恵まれ、予想を上回る人々が石切り場に集まってくれた。サミットには置賜地方の方々だけでなく、遠くは札幌、大阪、金沢から、福島、宮城など隣県と合わせて約100名の参加があった。

 

 日が傾いた特設舞台では高畠高校吹奏楽部の演奏、NURIギタークラブの演奏が石の壁に響き、地元のみなさんと演奏してくれた高校生、芸工大生らが入り混じって現場の大鍋で調理した芋煮に舌鼓をうった。芋煮会はチケット(芋煮、おにぎり2個、飲み物、漬物)が150枚売れる盛況だったという。

 

 伝統技術が伝えてきた自然利用の知と技、その教習システム。技能者がみせる身体能力。「本物」に触れた時に感じる心のざわめきと心地よい余韻。

 

 15年ぶり、50年ぶりといいながら、道具を手にしたとたん凛として身体に一本の筋が通る。みな、もう80歳になろうかという石工さんたちであるが、その姿は矍鑠としていて年齢を感じさせない。

 昨年に続き角石切りをやっていただいたHKさん。数日前にお会いした際に、矢で石が起きる瞬間ってどんな音がするんだろう、と呟いたら、翌朝5時から溝を一本掘ってくださり、サミット当日、矢打ちの実演と体験ができるようになった。今回はホッキリヅル等の道具作りやサミット全般の開催に尽力いただいた。

 角石切りに登場したATさん。1日2本切る「最速の石切」として高畠石のレジェンドといわれたパワーとテクニックは健在だった。50年ぶりに発破のツキタガネをもんだというFKさんとMHさん。たかだか3~4年しかやってないと言いながら身のこなしはさすがである。

 

  一本の雑木に乗せた石をウォータースライダーのように滑らせる「石落とし」。ゴォーと白煙をあげて滑るさまは迫力があった。Hさん親子の共演だった。昭和3年生まれのGHさん。

 最後の石切職人、ミスター瓜割。大正13年生まれのMHさん。長く瓜割界隈で間知割りをした。石を割っていた若いころの貴重な写真を提供してくださった。この二人は石工サミットに欠かせない職人さんである。

 この6名で行った座談会。わずか40分で終えざるを得なかったのが残念だった。一日中聞いていたい雰囲気だった。

千葉県からお母さんと一緒に来ていた小学生。サミットが終わってからもひたすら石を切っていた。大勢の観客の前で物おじせず、重いゲンノウで矢を打ち込む姿が印象的だった。

 

 

 

 

 

 

 

コンサートの演奏を終えた高校生にインタビューしてみた。石切り場で演奏してみてどう感じたか。石壁に囲まれた空間は音が反響し、演奏する者、聞く者に一体感を生み出す。石切り場は壁の縞模様が年輪のように時間の経過を感じさせる。そんな場所に幅広い世代の人々が集い、それぞれの思い出を語り合えるようなイベントになればいい。

 

 

 

実はこのサミットの舞台裏、かなり杜撰で主催者スタッフや石工さんとの打ち合わせがほとんどできなかった。ぶっつけ本番である。石工さんは阿吽の呼吸でこちらの意図を理解し、進行に協力してくださった。「職人」は段取りや周囲との協調など、普段から立ち振る舞いを現場で鍛えられているのだそうだ。いつも一歩先を考えて仕事をしている。ずいぶん助けられた。

 

 会の準備・運営にあたってくれた学生たち、当日飛び入りで応援してくれた郡山女子大の管野さん。御苦労さまでした。昨年に続き参加してくれた彫刻の院生たち。見事なノミさばきを見せてくれてありがとう。もっと皆さんとコラボする時間を用意できればよかったと後悔しています。アートを志す若者と伝統技術の出会い。何を感じてくれたでしょうか。

 

 学生スタッフは安久津二井宿観光振興会の役員のお宅に民泊させていただいた。たいそうなおもてなしを受けたそうだ。翌日、心地よい疲れを感じながら会場を撤収した。

 ささやかなイベントではあったが、石工さんが実演できる限り、話を聞ける限り、私たちはその価値を問い、土地の記憶、人の記憶を未来に引き継いでいきたい。

 

 最後になりますが、後援いただいた高畠町教育委員会、協力いただいた安久津二井宿観光振興会、高畠町石材工業組合、高畠石の会のみなさま、ありがとうございました。

 

 

※宇都宮市役所の井上さんが石工サミットの様子を紹介してくれています。

https://www.facebook.com/FacebookJapan#!/toshikuni.inoue.9/posts/427488784057059

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