日程 9月9日(水)〜17日(木)8泊9日
考古ゼミの3年生、院生に、1、2年の各1名を加え総勢8名が参加しました。左から、アンジー、かみ、あべちゃん、ぐみ、りえちゃん、たっちゃん、おこげ、ひろ。
タイではお互いをニックネーム(生まれた時に登録します)で呼び合います。本名はめったに使いません。大学の先生は、ファミリーネームを知らない学生が多いと言ってました。われわれも自己紹介ではニックネームを言うことにしました。
目的地はタイの東北部(イサーン)です。
イサーンはタイで最も貧しいといわれる地域です。高原地帯で水が少なく灌漑が未整備、土地に塩分を含むため地下水の利用が難しく、農作物の収量が低い、稲作は雨季のみの1期作。民族、言語、歴史、生業、料理など、いずれをとってもタイ中部や北部と違う独特の文化をもっています。ラオスやカンボジアとの共通点も多くみられます。研修の目的は3つあります。
第1は、フィールドで民族考古学の調査を体験することでした。伝統的な土器作り村をたずね、自然や生業、社会と土器つくり技術との関係を把握すること、技術変容の現場を観察し、なぜ技術が移り変わっていくのかを多面的に理解すること。このような調査によって、考古学が対象とする過去の現象を解釈するモデルを作ることが目的です。今回は短い時間でしたから、実際に村の中を歩き、ポターの女性から話を聞くことでその方法や意義が理解できれば十分です。村の人の豊かなくらしに触れ、自らが失ってしまった大切なもの、いくつ見つけることができたでしょうか。
突然の情報でようやく探し当てた村、86歳の現役ポターに話を聞けました。道すがら飛び込んだ村でゴザ織りをみたり、おいしい果物を貰ったり、予想外の展開があるのも民族調査の楽しみのひとつです。土地の人とまれびとの出会い、双方にとって何かが生まれる瞬間です。その心のざわめきを大事に育みましょう。
第2は、世界文化遺産となっているタイの代表的な遺跡をみて、歴史や文化を学ぶことです。タイは仏教国(上座部仏教で修行やお布施が盛ん)であり、王室を尊ぶことは世界的にも有名です。現王朝につながるアユタヤ遺跡はタイ人たちがアイデンティティーを寄せる所です。一方、イサーンにはかつて領土だったクメール王朝(カンボジア・アンコール遺跡群)の遺跡が点在しています。国境にある世界遺産カオ・プラ・ヴィハーンは残念ながら紛争地であるため避け、パノム・ルンやムアン・タム、ピマーイを見学することにしました。アユタヤもクメールの遺跡もともに寺院が中心ですが、材料やデザインの違いは顕著です。イサーンの人々はクメール遺跡にどんな思いを寄せるのでしょうか。
第3は、同じ世代のアジアの大学生と交流し、彼らの生の姿や考えに触れることです。今回はマハサラカム大学人文社会科学部タイ・東洋語学科にお邪魔しました。日本語専攻のナム先生と湯藤先生にお世話になりました。ここにはイサーン文化芸術研究所という、芸工大の東北文化研究センターのような場所があります。イサーンの伝統文化の研究とその振興に努めています。所長さんはナム先生のお父さんです。午前中3時間の授業に参加させてもらい、我々は山形の、芸工大の生活を紹介し、その後、ナム先生の授業に参加しました。短い時間でしたが学生たちはお互いの趣味の話で盛り上がっていました。
この旅行の期間中、学生たちの心に「何か」が芽生えつつありました。それが何なのか、私にはよくわかりません。まだ漠としたものかもしれません。異文化の地で、これまでみせなかったような好奇心と積極性。自然や人や暮らしや食への関心、それらの関係性へと眼差しが広がっていく・・・。他者を知ることで自己を知る。驚くこと、気づくこと、知りたいと思うこと。タイの人々の優しさに包まれながら、刺激に満ちた体験をしたことで、彼女らに眠っていた能力が目覚めはじめたようにみえました。このリアルな体験で得たことを、自らの脳にどう刻んでいくのか。一緒に語り合い、考えながらかけがえのないものにしていきましょう。
旅行日程
9月 9日(水)山形→東北道・常磐道→市川市(市川市泊)
9月10日(木)成田空港→スワンナプーム空港、王宮周辺散策(バンコク泊)
9月11日(金)アユタヤ遺跡(コラート泊)
9月12日(土)パノム・ルン遺跡、ムアン・タム遺跡(コラート泊)
9月13日(日)ダーン・クウィアン村の陶器作り、ピマーイ遺跡(マハサラカム泊)
9月14日(月)モー村の土器作り(マハサラカム泊)
9月15日(火)マハサラカム大学訪問、モー村(マハサラカム泊)
9月16日(水)マハサラカム市内散策、コラート・タラー村土器作り、スワンナプーム空港(機中泊)
9月17日(木)成田空港→東関東道・鹿島神宮→常磐道・東北道→山形
安くてうまいものばかり。。。。だったなぁ
夕食はタイ料理中心、昼食にイサーン料理を食べました。
思い出すと口が中が潤う夕食編