8月のお盆明けから始めた発掘調査が所期の目的を達し、予定通り今日完了した。約1ヶ月半、短い夏休み期間をまるまる費やしたことになる。その間、発掘以外のことがほとんどできなかったに違いない。季節はいつのまにか夏から秋に変わっていた。
この1ヶ月半の時間はそれまでの日常とはちょっと違ったはずだ。物理的な時間の長さではなく、その間をどう過ごしたかという質的な時間が重要である。日々せまる課題に向き合い、土を観察し、掘り、測り、描き、考える。その繰り返し。後半は先輩や先生からプレッシャーをかけられ、あの賑やかな車のなかが何度か沈黙した。夢にも見た。自分の担当する仕事を確実にこなす。指示待ちではいられない。少しずつではあるが先を読み動けるようになった。
発掘の1日のなんと短いことか。1ヶ月半はあっという間だった。そんな濃密な時間を蓄積していくことが人の成長や幸福感にとって大きな意味をもつように思う。
そういう意味であなたたちはかけがえのない経験をしたのだと信じたい。人生からみればほんのわずかな時間だが、学生であるこの時期に集中して何かに打ち込んだこと、そこで得られた達成感や確かな教訓を今後の財産にしてくれたらいい。
最終日のドキュメント
朝、3陣に分かれて出発した。石室実測班は始発電車、お掃除写真撮影班は7時、埋め戻し精鋭部隊兼応援隊は8時。
朝から雨が降っていたが、写真撮影は今日しかない。9時前に掃除を終え、なんとか撮影を完了した。午前中は精鋭部隊が前庭部でだめ押し調査と最後の実測を行った。
土壇場で米短の吉田先生と学生たちが見学に来てくれた。歓先生「歓」声で迎えられ相変わらずの人気者ぶりだった。ブドウの差し入れありがとうございました。それから川西町の里山と下小松古墳群を愛する会7名の見学もあった。
そして今日はシーズン最後の赤鬼。おばちゃんたちと恒例の記念写真。食堂には毎年増える写真立てとゼミTが所狭しと飾られている。壁面を侵略してちょっと申し訳ない気もする。4年間赤鬼に通った4年生への卒業祝いもかねた滝沢屋の豆腐プリンとホットコーヒーを全員が御馳走になった。小雨降る中、外まで出て手を振って見送ってくれた。いつもながら切羽詰まった終盤にすさんだ心を和ませてくる。本当にありがたい。
午後からいよいよ前庭部の埋め戻しにかかる。遺構面にその保存と発掘層位を明示するため山砂を敷く。そののちに高く積み上げられた土のうの山を1袋ずつ崩し、開封しては埋めていく。土のうの中から回収したもの。スプーン1、移植ごて1、竹べら1、竹串数本、土器片2。まあまあというところか、例年並みだった。
土のう祭りには小雨が良く似合う。いい具合に小雨が降るなか、作業は進む。次第に訳のわからない言葉や唄が飛びかう。自我の崩壊がはじまった。
16:00、雨が上がりブルーシートを外す。赤鬼のおばちゃんたちが食べやすいよう皮をむいて切ってくれたリンゴをほおばりながら作業に汗を流す。空腹と乾いた喉にしみいる。
17:00、いったん埋め戻しを中断し、足元が見えるうちに撤収機材を駐車場まで運搬する。
17:45、あたりが暗くなり、照明に灯がともる。いよいよ土のう祭りのクライマックスだ。石室からも奇声が聞こえる。南の山(通称・戸塚山城)はオバケ土のうだらけ。さすがに最後は握力がなくなり、運ぶ足がもつれてきた。詰めた本人なので文句は言えない。仕上げに埋め戻し部隊が整列し、一斉に足踏みで圧をかけた。
19:05、ついに埋め戻し完了!続いて19:15石室実測班も作業終了。早朝から12時間狭い石室の中で作業をした。床面の敷き石がでこぼこしていてお尻が痛かったはずだ。身動きできない石室内に1週間籠って実測するのは足腰に負担がかかる。痛みによく耐えた!・・・最後の粘りを称えたい。
19:25、一同埋め戻しを終えた前庭部に集まり、棟梁の掛け声で一本締め。各自、空土嚢を詰め込んだ袋を両肩にぶら下げ、暗闇の林を抜けて車にたどり着く。
20:00、高畠駅でジャンプ!ジャンプ!いったい何回飛んだことか。こんなふうにみんなバラバラで一緒がいい!
そして、最後の車のなかはやっぱり♪ポルノグラフィティだった。
今回の発掘調査、多くの方々のお世話で成し遂げられたことを忘れないでほしい。地権者、調理師専門学校、市教委、地元の方々、卒業生、先輩たち、見学に来てコメントをくれた方々・・・・。感謝します。ありがとうございました。
さあ、これからは第2幕。遺物整理、さらには報告書刊行へと続く。しばし休息せよ。そして、この経験を就職活動に生かすのだ・・・・・