東南アジアの土器つくり村を歩いていると、それぞれの土地で、共通点や差異が見い出される。
ウボン県のD村は水甕の口縁部端部に多様な形があるのが特徴だ。一見、バラバラにも見える。
今回の調査の目的はなぜそうなのか?理由を探すためにやってきた。
考古学者は土器の細かいつくりに注意する。とくに口縁部形態には異常なほど敏感だ。
昨年来た時も、一人のポターの家に違ったつくりのがあったので聞くと、「そんなの去年と今年で違うわよ!」と平気で言うのだ。単純に職人の規範が緩い、自由度が高いなどと思っていた。
多様な口縁部形態が生まれた理由を探すため一人ひとりから話を聞き、土器を1点1点実測して歩いた。
初日の調査で、ポターの間にはパァ・タマダ(ノーマルな口作り)とパ・ギャッ(指で波状の飾り付けをした口縁部)、パッ・コム(丸縁)とパァ・ベン(平縁)という口作りに関する概念があることが分かった。
Jさんが新型水甕モーイオイをつくっているのを見ていたら、12個のうち5個が丸縁で7個が平縁だった。葉っぱで口を水挽きする時の指の当て方が明らかに違うのだ。これまでは一人は一つの技法で成形すると勝手に思い込んでいたので、目からうろこが落ちるようだった。
次々訪ね歩くと、やはり同じように両方の口作りをもつポターに出会った。これはいったいどういうことか。ある人は30年前から両方あるよ、私は3年前から平縁をつくったよ、などバラバラだ。私は丸縁しか作らないよ、いったいこれは?
そして、旧型水甕モーウナム、鍋モーケン、湯釜モーヌンは、平縁がわずかで、丸縁が圧倒的に多い。
これはきっと何かあるに違いない。わくわくしてきた。
話は変わるが、朝一でYさん家にいくと見たこともないモーケン(消し炭入れに使用)に出会った。土器を注文し、取りに来たウボン・ワリンチャムラップ(1日に行ったC村のある地区)の人が持ってきたそうだ。よその村で作られた製品が持ち込まれる。我々は「搬入品」と称しており、遺跡でもよくあることだ・・・・