早起きして致道博物館に行って来た。寒河江までは霧の中、月山道に入ると朝日を浴びた紅葉が目にまぶしく飛び込んできた。
卒論の調査で鶴岡に1週間あまり滞在するという4年生と合流。見学がてらちょっとだけお手伝いする後輩たち。
卒論を書くプロセスは大学生という時代をいかに生きたか、それを問うのに等しい。社会に出るための通過儀礼であるが、どうせなら誇りと自信を得て出て行ってほしい。
黙々と生の資料に向き合う時間、積んだり崩したり手あかに染める時間、自分の懐で温め寝かせる時間、ひらめく瞬間、書き終えた達成感。
現実逃避の日々は終わった・・・・。資料と自分と向き合おう!
建物は、明治14年創建の重要文化財−旧鶴岡警察署。
玄関脇の個室、なかなか落ち着く部屋だ。
はて?受付?取調室?
8月のお盆明けから始めた発掘調査が所期の目的を達し、予定通り今日完了した。約1ヶ月半、短い夏休み期間をまるまる費やしたことになる。その間、発掘以外のことがほとんどできなかったに違いない。季節はいつのまにか夏から秋に変わっていた。
この1ヶ月半の時間はそれまでの日常とはちょっと違ったはずだ。物理的な時間の長さではなく、その間をどう過ごしたかという質的な時間が重要である。日々せまる課題に向き合い、土を観察し、掘り、測り、描き、考える。その繰り返し。後半は先輩や先生からプレッシャーをかけられ、あの賑やかな車のなかが何度か沈黙した。夢にも見た。自分の担当する仕事を確実にこなす。指示待ちではいられない。少しずつではあるが先を読み動けるようになった。
発掘の1日のなんと短いことか。1ヶ月半はあっという間だった。そんな濃密な時間を蓄積していくことが人の成長や幸福感にとって大きな意味をもつように思う。
そういう意味であなたたちはかけがえのない経験をしたのだと信じたい。人生からみればほんのわずかな時間だが、学生であるこの時期に集中して何かに打ち込んだこと、そこで得られた達成感や確かな教訓を今後の財産にしてくれたらいい。
最終日のドキュメント
朝、3陣に分かれて出発した。石室実測班は始発電車、お掃除写真撮影班は7時、埋め戻し精鋭部隊兼応援隊は8時。
朝から雨が降っていたが、写真撮影は今日しかない。9時前に掃除を終え、なんとか撮影を完了した。午前中は精鋭部隊が前庭部でだめ押し調査と最後の実測を行った。
土壇場で米短の吉田先生と学生たちが見学に来てくれた。歓先生「歓」声で迎えられ相変わらずの人気者ぶりだった。ブドウの差し入れありがとうございました。それから川西町の里山と下小松古墳群を愛する会7名の見学もあった。
そして今日はシーズン最後の赤鬼。おばちゃんたちと恒例の記念写真。食堂には毎年増える写真立てとゼミTが所狭しと飾られている。壁面を侵略してちょっと申し訳ない気もする。4年間赤鬼に通った4年生への卒業祝いもかねた滝沢屋の豆腐プリンとホットコーヒーを全員が御馳走になった。小雨降る中、外まで出て手を振って見送ってくれた。いつもながら切羽詰まった終盤にすさんだ心を和ませてくる。本当にありがたい。
午後からいよいよ前庭部の埋め戻しにかかる。遺構面にその保存と発掘層位を明示するため山砂を敷く。そののちに高く積み上げられた土のうの山を1袋ずつ崩し、開封しては埋めていく。土のうの中から回収したもの。スプーン1、移植ごて1、竹べら1、竹串数本、土器片2。まあまあというところか、例年並みだった。
土のう祭りには小雨が良く似合う。いい具合に小雨が降るなか、作業は進む。次第に訳のわからない言葉や唄が飛びかう。自我の崩壊がはじまった。
16:00、雨が上がりブルーシートを外す。赤鬼のおばちゃんたちが食べやすいよう皮をむいて切ってくれたリンゴをほおばりながら作業に汗を流す。空腹と乾いた喉にしみいる。
17:00、いったん埋め戻しを中断し、足元が見えるうちに撤収機材を駐車場まで運搬する。
17:45、あたりが暗くなり、照明に灯がともる。いよいよ土のう祭りのクライマックスだ。石室からも奇声が聞こえる。南の山(通称・戸塚山城)はオバケ土のうだらけ。さすがに最後は握力がなくなり、運ぶ足がもつれてきた。詰めた本人なので文句は言えない。仕上げに埋め戻し部隊が整列し、一斉に足踏みで圧をかけた。
19:05、ついに埋め戻し完了!続いて19:15石室実測班も作業終了。早朝から12時間狭い石室の中で作業をした。床面の敷き石がでこぼこしていてお尻が痛かったはずだ。身動きできない石室内に1週間籠って実測するのは足腰に負担がかかる。痛みによく耐えた!・・・最後の粘りを称えたい。
19:25、一同埋め戻しを終えた前庭部に集まり、棟梁の掛け声で一本締め。各自、空土嚢を詰め込んだ袋を両肩にぶら下げ、暗闇の林を抜けて車にたどり着く。
20:00、高畠駅でジャンプ!ジャンプ!いったい何回飛んだことか。こんなふうにみんなバラバラで一緒がいい!
そして、最後の車のなかはやっぱり♪ポルノグラフィティだった。
今回の発掘調査、多くの方々のお世話で成し遂げられたことを忘れないでほしい。地権者、調理師専門学校、市教委、地元の方々、卒業生、先輩たち、見学に来てコメントをくれた方々・・・・。感謝します。ありがとうございました。
さあ、これからは第2幕。遺物整理、さらには報告書刊行へと続く。しばし休息せよ。そして、この経験を就職活動に生かすのだ・・・・・
今日は全景写真撮影日。朝から清掃し、雲をまったが、夕方まで全く来なかった。ここ数日秋晴れ続きで作業ははかどるものの写真が撮れない。天気はきまぐれ、うまく付き合うしかない。明日は最終日でいよいよ埋め戻しだ。朝から雨との予報。土のう祭りにはうってつけの天気だ!
今日はぷち早出。
いつもより30分だけ早く大学を出た。ほんのわずかでも1時間足らずの通い道、見慣れた風景が違って見え、早朝の現場の空気がすがすがしく感じられた。
最近は夕方、真っ暗になるまで仕事をしている。蛇行する林の中の小道は明りがなくても勘で歩けるようになった。1日2往復をもう30回以上歩いた。
9月13日に設定した第1トレンチの調査が今日ほぼ終了した。大雨で水没し苦労したが、あすにはいち早く埋め戻しにかかる。開発工事に伴う緊急発掘調査では、調査終了後、事業者に引き渡すので「埋め戻し」という段階がない。学術調査ならではの仕事だ。あれこれ悩んで、苦労して掘ったトレンチを(底に山砂を敷き)一気に埋め戻す。このときの感覚はなんともいえない。虚しさとともにやりとげた達成感を味わう。
さああと3日間。ほかの調査区も逃げ遅れないようにがんばろう!もたもたしていると背後から土のうが迫ってくるぞ・・・
今日は専門学校の理事長らが見学にきてくれた。生徒たちにみせたいとのこと。赤鬼では芋煮のサービス。定食食ったのに、おいしくておかわり続出。
ピーンと張り詰めた緊張感。集中力が高まる。忘れかけていたあの頃の感覚がW君、T君とともによみがえってきた。
現説が終わって今日ようやく前庭部の床面がみえてきた。祭祀土器が羨道から南西に傾斜しながら帯状に出土。小刀も出土した。昨日検出した木棺墓?の遺構も全貌を現した。
1トレの土層堆積もやっと分層ができた。
連日、みなが平面図、土層断面図に追いまくられている。図面を描くことは遺構・遺物を観察し解釈することである。発掘とはすなわち「実測」することなのだ。遺物整理・報告書作成を通してその意味を知るだろう。
写真撮影のわずかの合間に食べたリンゴがやけに美味しかった。赤鬼のおばちゃんの差し入れ、やさしさが染みていた。
いよいよ土壇場にさしかかった。最後の力を振り絞ってやり遂げよう!
大学祭も終わり、また月曜になってしまいました。
ブルーマンデーな北野ゼミ4年しまです。
去る9月23日土曜日。
私たち北野ゼミが昨年から引き続き調査を行っている米沢市戸塚山古墳群106号墳において、現地説明会が開催されました。
現場での作業ももちろん大変ですが、現地説明会の前は大学に帰ってきてからやることもたくさんあります。
当日の資料に載せる原稿や図版作りはもちろん、展示する出土品のクリーニングや接合などなど・・・
それぞれの役割を果たして本番に臨んだことでしょう。
30日の埋め戻しまでがんばって!
頭と心の捻挫にお気をつけくださいね
戸塚山古墳群は山頂に5世紀後半の前方後円墳と作りだし付き円墳(帆立貝式古墳)がある。
現在調査中の106号墳を含め7世紀後半〜8世紀初頭の群集墳は、その西麓にあり約180基の円墳で構成される。
この両者の間には200年ほどの開きがあり、直接的な系統関係をたどることはできないが、7世紀の人々の墓域の設定に、かつてこの地を支配した王の眠る山という歴史、信仰が深くかかわっていたのではないかという説がある。
ところでこの戸塚山は中世においても信仰のハヤマだった。
東麓には修験にかかわる道場跡や墓地が知られ、西麓にも墓地が確認されている。一昨年、米沢市が調査した34号墳(金ケ崎支群)では古墳を改造して、逆F字型の石室と墓道をもつ方墳が作らていた。中からは2基の木棺墓が検出された。このように古墳の石室を中世の墓地として利用する例は珍しくはない。
現在調査中の106号墳でもその痕跡が見つかった。石室の前庭部に木棺墓とみられる遺構が存在した。底には平らに石を敷き詰め、棺の上面に石を置いている。前庭部がかなり埋まった段階で掘りこんでおり、中世の可能性が高い。
古墳群から600年、700年後の人々もこの地を祖先の眠る聖なる空間、場所として認識していたのかもしれない。
今日も朝から2人の卒業生が調査に参加した。「背中で仕事をする」そんなメッセージを後輩たちに送っていた。明日は大学祭2日目、しばし現場を忘れて楽しんでもらいたい。
3日間の大雨にもめげずになんとか現地説明会を開催した。
朝現場につくと、戸塚山幼稚園の大運動会。応援に来た家族の車で駐車場が満杯。急きょ、置賜駅に車をとめて歩くこととなった。
到着早々、現説に備え調査区の清掃と見学路の整備に着手。わがゼミ3年生は遺構の精査。湧水が止まらない1トレは直前のバケツリレーでなんとか見れるようにはなった。
合宿中も参加してくれた4年生と福田ゼミ生たちは会場設営に汗を流した。土嚢積み一つにも気を使え!それが土木(現説)の基本だ!と檄をとばす。それと昨日インドから帰ったばかりの2年生も応援に。さらには朝から駆けつけた卒業生。総勢14名、全員がそれぞれの役割を果たし、なんとか13:30の現説にこぎつけた。そのころには幼稚園の大運動会も終わり、昨年のような大混乱はなかった。
調査成果の説明には3年生の3名が立った。緊張しただろうが、無事役割をこなした。見学者のほとんどがプロだったのだ。
発掘現場ではみなに役割がある。各自が確実にそれをこなすことで全体として大きな力が生まれる。みんなが自立し、孤立しない。そして、さまざまな形でサポートしあう、そんな関係も必要になる。今日の現説はそんな場面が各所に見えたのが一番うれしかった。
むかし発掘現場の様子をサッカーの布陣にたとえた試合中継をした学生がいた。最近時々、そのことが頭に浮かぶ。私が書くと語弊があるといけないので控えるが、今年のチームはなかなかいい試合をする。これから後半のこり10分、きついが踏ん張りどころだ。あついドラマが生まれそうな予感・・・
現説が終わってシート掛けをしている最中に突然現れたI君。えらい遅刻だったけど、電車に乗ってわざわざ来たパフォーマンスは悪くはない・・・
毎朝、車を降りて現場まで5分ほど林の中を歩く。わずかな距離だが、ここを歩くうちに自然と集中力が高まっていく。終盤になって歩くスピードが増した。
現説も終わってホッとひと息?
ところがどっこい待っているんです、最後の追い込みがっ!!
この一月のあいだ遺構と向き合い、仮説と検証を繰り返したその集大成が!!
自分で設定した一日ごとの目標は達成できた?
明日のためにやらなきゃいけないことは確認できた?
自分が担当しているトレンチだけじゃなく、全体を見渡してこそ新たな発見があるかもしれないよ!!
この濃い経験をした一月が、さらに凝縮されることになるよ!!
さぁできる力全てを振り絞り、遺構と向き合おう!自分と向き合おう!!
頑張れ若人よ!!
(T野)
台風一過とおもいきや、今日も雨が残った。
とくに墳丘断面確認の第1トレンチは水没。汲んでも汲んでも土中から水がしみてくる。玄室の地下は礫敷きの暗渠になっているため水がたまらない分、墳丘裾から染み出す仕組みだ。玄室内に湿気がこないようによく考えてく作られている。大雨によってそのことが確認できた。
閉塞石の下から伏せられた状態の杯Aがでてきた。玄室の入り口に「土器を伏せる。」何やら意味を持たせたくなる出土状態である。