気になる石鳥居があって高畠町の三条目を再訪した。相森山の参道に立つ熊野神社の鳥居だ。山頂に立つ一つの社殿を両裾にある二つの集落が祀る。いまでは春と秋にそれぞれ分担してお祭を行う。両集落からのぼる参道の尾根道には対峙するように2基の石鳥居がたつ。ともに宝暦年間の銘がある。
調査し終わって山を下りると、近くの小屋から物音がしたのであいさつがてら訪ねてみた。会社を退職後、故郷の村に帰ってきた旦那さんがひとりで大工仕事をしていた。子供の頃、鳥居をくぐって山頂で遊んだ話等を聞かせてもらった・・・・
挨拶して別れた後、学生がこの石鳥居をひとりでスケッチしていた。小一時間、ほかの鳥居を調査して戻ってくると、旦那さんがおもむろに一枚の絵を持って現れた。学生の後ろ姿を見ながら、気にかけてくれていたようだ。
この絵は埼玉に住む自分の妹が、6年前に帰省した際、姪っ子の夏休みの宿題に一緒に家の前で写生したものだという。いまはもう伐採されてしまったスギの木も描かれている。さくらんぼの木やラフランス畑は今も健在である。
私たちが気にいったこの風景を、同じように故郷の原風景として愛着を持った一つの家族の物語に触れたような気がした。
小屋の中の物音に気づかなければ出会うことのなかった絵画。
まちを歩いていると、こんな偶然にときどき出会う。
引き寄せられるように出会ってしまう。
そんな思いをして育っていた学生も少なくない。
感度のいいアンテナをあげていれば、情報は向こうからやってくる。
山形市内の中学生が芸工大にきて、一日ワークショップを楽しみました。
歴産の演習室では大学生のお姉さんたちの指導を受けながら、本物志向の土器作りに挑戦しました。
ラオスの土器作りの映像を見ながら、伝統社会に暮らす人々の生活の知恵にも触れました。熱帯地域でなぜ水甕が必要なのか。土器に入れた水が漏れていく実験を見ながら、水が冷たく保存されるんだと言うと、即座に理科の授業で習った「吸熱」効果だ!「打ち水」のことも知っていて逆にびっくりさせられました。
5月24日。学生3人で、高畠地区公民館主催の高畠石まち歩きに参加してきました。当日天気はとてもよく快晴で暑くて熱中症が出ないかが心配でしたが、そんななか、まち歩きコースは高畠の名産高畠石を巡り、石の加工場や石蔵など見どころの旧高畠駅舎も巡る充実した探索コースでした。
開会式の様子。
右端は御年90歳のMさん。
むかし間知石を切っていた石工さんで『高畠石の里をあるく』に登場していただいた方である。石工サミットにも来ていただき、今回ウォーキング?にも自転車で参加してくださった。
ガイドは高畠地区公民館の館長さんと石材加工店のHさん。お二人とも丁寧に教えてくださり初めて高畠石を学ぶものには楽しみながら探索できるものでした。
元気旺盛な高畠の子供たちに混じって九州から高畠に移住したばかりの夫婦の方もご一緒で、皆さんと会話しながらの楽しい雰囲気で探索コースを巡れました。こういった高畠石を通した地域参加型の行事は、地域のコミュニティーの輪を広げると同時に、地元の子供たちの教育にも一翼かっていることを実感しました。
瓜割丁場での興奮が冷めやらぬまま、陽気に誘われて沢福等(さんぶくら)の山を歩いた。
最後に機械切りが入った丁場からはじまり、5か所の角石丁場と山じゅうに点在する間知石丁場、鍛冶小屋跡を歩いた。機械切りが入った場所を除くと、沢福等はもう廃絶して50年ほどたつ。つわものどもが夢のあと。木々が生い茂るなかにも往時のにぎわいを感じることができる。
「和」「昭和三十三」「弘」「御盆記念」「大正拾」「○に三」、壁面に刻まれた文字。貴重な資料だ。
足元に注意:水に足を落とすキャラ・・・誰ですか。沢福等丁場
瓜割丁場にて
日曜日、高畠の石工さん(78歳)が山から石を下ろす伝統の技を再現してくれた。
山で切った角石(300kg)を一本棒に乗せて石降ろし道を滑らせる。文章で書くとただそれだけのこと。けれども、あり合わせの材料と簡単な道具でそれを成し遂げる。その知恵と身体技能には驚くばかりだ。いいものを見せてもらった・・・・・。
平地で使う土ゾリ。接地面に廃油を塗った橇を曳く。ばた薪の上を面白いように滑る。
連休明けの2日間、考古ゼミの学生が木材の樹種同定の手法を学びました。
講師は考古ゼミの卒業生、㈱パレオラボで活躍している小林克也さん。慣れないカミソリで指を切る学生が続出しました。切りとった細胞(切片)をプレバラートにのせてそれぞれ顕微鏡で観察しました。
当日は美文(保存科学・立体修復)の学生たちとの合同授業としました。
考古学では先史古代の人々が自然をどのように利用しながら生きてきたのか。そんな問いが不可欠です。樹種を言われてもピンとこない学生がほとんどです。日頃から身の回りの自然、樹木、用材に関心を寄せましょう。
このたび、日向洞窟の資料を使って、2日間に渡って映像学科屋代ゼミと歴史遺産学科長井ゼミの合同ゼミをやりました。
学科間のコラボによる学生交流を目的として、考古資料を題材とした映像実習を計画しました。
考古学では発掘現場の様子や出土資料を撮影して、1次情報を記録した発掘調査報告書を作ります。考古学といえども、一定の写真撮影の技術が必要となります。そこで今回は、日向洞窟遺跡の現地と出土資料を題材として、写真撮影の技術を2日間学びました。
1日目は「風景撮り」実習です。まずは長井先生が映像学科の屋代先生を発掘現場に案内。途中、鳥上坂で白竜湖を撮影しました。それから、日向洞窟の周辺で撮影スポットを探します。快晴に恵まれて、光の按配も申し分なし。映像学科が所有する広角レンズを使って日向洞窟周辺の地形を広く撮影しました。学生たちは、三脚の立て方に始まり、カメラ操作の基礎から様々なことを教わりました。今回撮影したデータの一部はphotoshopでパノラマ画像に変更する予定です。次は撮影した写真の編集についてのゼミが企画されるかもしれません。
2日目は「物撮り」実習です。こちらは昨年発掘した土器や石器を撮影するというものです。長井ゼミの歴史遺産研究の授業の一環として行いました。3・4年生中心です。講師には、屋代先生の配慮により、プロのフォトグラファーである藤山武先生をお招きしました。屋代先生とゼミ生たちは初めて見る縄文時代の土器や石器に興奮のもよう。映像学科のゼミ生たちには長井先生が遺物の説明をしました。歴史遺産学科の学生たちには藤山先生がカメラ台セッティングの手法について説明、その後全員で出土遺物を撮影をしました。
初めての考古遺物の撮影にプロの藤山先生もやや動揺。しかし、さすがにプロの技術。素晴らしい写真を次々と撮影されました。最後には、撮影が難しいとされる黒曜石の有舌尖頭器(こちらは長井先生作のレプリカ)にも挑戦していただきました。黒曜石は天然ガラスともいわれます。光沢が目立つためにライティングの高度な技術が求められます。これには藤山先生もやや手こずった様子でしたが、藤山先生の技には参加者から感嘆の声も。
私たちも初めて入るスタジオで少し緊張しましたが、機材の扱い方や照明の当て方など詳しいところまで教えていただくことが出来ました。
学生一同、今後、教えていただいた技術を自分たちのものにし、後輩にも伝えていけるようにがんばりたいと思います。
<映像学科のブログでもこの講義の様子が紹介されました。>
→ 映像学科ブログ 5月13日の写真演習の様子
一山越えて国見石(福島県伊達郡国見町)の里を訪ねました。
ゼミの学生二人と某女子大のO先生が一緒でした。
まず役場で職員から福島県産石材のレクチャーを受け、それから車で町内を案内していただきました。国見石は近代の史料のなんと多いことか。羨ましい限りです。
私たちの車の中は異様な興奮に包まれました。石蔵や石塀がそこらじゅうにあったからです。一番驚いたのは同乗していた役場の人たちだったかもしれません。小坂では戦前と戦後の蔵が仲良く並んでいました。
ある石屋さんのお宅には大正6年建造の石蔵や図面が残っていました。栃木県の大谷から昭和40年ごろに導入した整形用の機械が今も現役で活躍。表面加工のローラーは2種類あって、それぞれ見たことのある痕跡だったので、「これだったのか!」と納得しました。
これに乗って削れられる石の気持ちになると、身が細る思いです。機械導入によって石の表情が一変しました。年代の基準になるので石蔵の時期を知るのに役立ちます。
石の町にもそれぞれ個性があって興味がそそられます。国見がなぜこれほど蔵が多いのか。国見は大谷の影響を色濃く受けているのに、なぜ高畠はほとんど受け入れなかったのか?
2年間高畠をあるいてきた学生たちが比較する「定点」を持っていることは強みです。
中国産間知石。こうやって入ってくるんだ~
ポスターセッション会場の様子
「考古学野外演習」では、3日間遺跡の発掘に参加する。何気なしに参加した演習だったが、非常に面白く、私は考古学の虜になってしまった。その発掘中に任された仕事が、「水洗選別」だった。水洗選別は、微細遺物(石器や土器、動物の骨など)の回収を目的に、発掘中に出た土を持ち帰りふるいにかける作業のことだ。
その水洗選別による中間的成果を、4月19・20日と岡山大学で開催された考古学研究会第60回総会・研究集会のポスターセッションで発表してきた。タイトルは「日向洞窟遺跡における水洗選別資料の分析と堆積構造の検討」。発掘の成果の中に、自分が行った作業の成果を加えて貰うことが出きて、とても嬉しかった。ポスターセッションの発表代表者は長井謙治先生である。学生は自由参加であったが、同行した私も説明する機会を得た。はじめての経験だったがなんとか自分の言葉で説明することができた。また、期間中に第一線で活躍している研究者の皆さんから様々なことを聞くことができ、とても参考になった。
考古学の楽しさを、今一度感じた2日間だった。今回の経験を、今後の研究に活かしていきたいと思う。
発表の風景
会場となった岡山大学構内
2月9日山形県立うきたむ風土記の丘考古資料館研修室において、平成25年度考古資料検討会が行なわれました。本学の長井謙治講師による調査報告もありました。
夏の歴史遺産学科の発掘調査においてお世話になった地元の方々への感謝の気持ちをこめて、発掘に参加した学生6人はいざ、山形県立うきたむ風土記の丘考古資料館へと出発しました。あいにく天気は大雪でしたが、無事目的地へと到着し、着いたと同時に発掘の際にお世話になった職員の方々にお礼を述べ、急いで考古資料を展示し、発表へと備えました。
遺物を展示する学生たち
展示された日向洞窟の遺物
平成25年度に県内で行われた発掘調査や、これまでに発掘された資料についての報告と検討が主に行われました。
基調報告「2013年県内の発掘調査の概要」 県文化財・生涯学習課 竹田純子 氏
調査報告
(1)日向洞窟西地区遺跡(高畠町)東北芸術工科大学 長井謙治 氏
(2)元宿北遺跡(川西町)県埋蔵文化財センター 菅原哲文 氏
(3)台遺跡(長井市)長井市教育委員会 岩崎義信 氏
(4)米沢舘山城跡(米沢市)米沢市教育委員会 佐藤公保 氏
研究報告「酒田市飛島西海岸製塩遺跡」 東北歴史博物館 相原淳一 氏
この順に発表が行われ、学生や一般の参加者も報告が終わるたびに質問を投げかけ、とても熱い質疑応答がくりかえし行なわれました。
時代や種別がまったく違う遺跡の説明がされたため、調査の概要や遺構の様子の説明なども多種多様な違いがあり、それにまた関心がわきました。すべての発表者が何らかの成果をあげており、新しい発見をつかむ様子が目にとれ、よい刺激となりました。また、発表者方からスライドの発表や展示遺物の説明を受けこれからの発掘を通して学生が発表する立場になった際どのように展示・発表を行えばよいのかなどの具体的な説明を受ける事もできたためこれからの発掘調査に向けたよい体験となりました。
長井先生のご講演の様子
発掘資料を説明をする芸工大生(左より、佐藤鎮雄前館長、佐藤庄一氏)
今回多くの参加者の方々が学生の私たちに善意で過去の発掘のお話や資料整理の説明を発表外の時間にお話ししてくださり、まだまだ知識や経験が足りない私たちにとってこのお話は、これからの発掘調査やその後の作業の大きな助けとなる事だと思うので今回の討論会の内容を忘れずにこれからも考古学に向き合っていきたいです。
お昼に皆で食べた龍上海の味噌ラーメンと帰る際に雪の中遊びまわった事もよい思い出です…