【「戦略」調査報告】阿仁における春グマ猟の記録
春になり山肌の木々が芽吹く前に、冬眠から覚めたクマを巻いて捕獲するという春グマ猟は、マタギが古くからおこなってきた猟法の一つです。連休中の5月5日に秋田県北秋田市阿仁地区でおこなわれた猟の記録に歴史遺産学科の学生2名と一緒に行ってきました。今回の猟は、法定猟期外ですが、同市がすすめているマタギ文化(狩猟技術)の記録という学術目的で許可され、おこなわれたものです。
早朝、猟師たちが待ち合わせ場所に集合したのち、全員で集落の外れにある山の神神社へ参拝に行きました。その後、入山地点へ車で移動し、そこから歩いて猟場へ向かいました。今回は阿仁合猟友会の方も参加され、20人を超す大人数での巻き狩りとなりました。途中で射手(マチッパ)や勢子など役割分担や配置を打ち合わせし、それぞれ順次、別れていきました。私たちは、猟場を見通せるところでクマの場所や猟師の配置を指示する、ムカイマッテと呼ばれるマタギの方について見学させていただきました。
数時間かけ全員が配置につくと、やがて勢子の声が谷底から響きだし、猟が始まりました。私たちもマタギの人たちと一緒になって双眼鏡で対岸のクマを探しましたがなかなか見つけることができません。結局、今回は巻いた猟場のなかにクマはいたようですが、射手と勢子の間を抜けていき、獲ることができませんでした。
しかし、実際に現場を見させていただくことで、道のない柴山(藪山)を、あるいは傾斜の急な雪渓斜面を自在に歩き回る猟師たちの高い身体能力や、まるで自宅の庭のように猟場の地形や地理を覚えている、その知識の豊かさを実感することができました。
(蛯原 一平)