私にはできないことがたくさんある。というより、できないことだらけだと言ってもよい。教員としても反省すべき点は多々あるであろう。それ以前に人間として反省すべきかもしれない。だいたいは反省などしないで前だけ向いて生きているので、そのようなことは考えないのだが、編集の仕事をしていると一人では何事もできないと痛感する。能力が不足しているのではなく、単純に自らの能力が同じ象限にないのか、もっと端的にベクトルの方向性が違うと表現したほうがよいのだろうか。
たまに「『文芸ラジオ』の編集は大変でしょう」ということを聞かれることがある。「やめたらいいんじゃないですか」とは言われないので、大変な作業だが何とか成立はしていると思われているようだ。すでに公言しているが、この編集作業に関して労働代は発生していない。さらには創刊号に論考を寄せたが原稿料も発生していない(蛇足ながらすでに創刊号の論考は全部書き直したい気分である……というより再考した論文がそろそろ別媒体で出るはずである)。もちろん学生編集委員や原稿を書いていただいた方々やインタビューをお受けいただいたみなさんにはすべてその対価を支払っているので、自分を含む教員は無料ということである。要はこの仕事で金銭面での充足を求めることはできないのだ。
では何をしているのかというと、私が読みたい人に原稿を依頼したり、会いたい人にインタビューを行ったりして精神的な充足を求めているのである。『文芸ラジオ』2号が書店流通するのは5月頃を予定しているが、その2号で私がぜひインタビューをしたいです!と編集会議で連呼していたのが小橋めぐみさんである。連呼しすぎて学生もうんざりしていたであろう。ちょうど『恋読』を発売されたばかりであったので、説明しやすかった。そうでなければ、『トリック2』で初めて認識して……という自分語りをしなければならなかったかもしれない。そしてますます学生はうんざりしたであろう。ところが実際にお会いした際に、『ウルルン滞在記』の話になり、小橋さんの出演回を偶然、私が見ていたことに気付いたので、深層心理的にはそちらが最初かもしれない。言われた瞬間にニューロンがスパークしたように映像が頭の中に浮かんだので人間、覚えているものである。
さて上記の記念写真を見ていただければわかるように、インタビューと写真撮影を行うだけでも様々な人が関わっているのがわかるであろう。私たち教員だけではなく、インタビューを快く引き受けていただいた小橋めぐみさん、デザイナーさんにカメラマンさん、もちろん学生編集委員、そしてスマホのシャッターを押している(具体的には画面をタッチしている)小橋さんのマネージャーさん、コーヒーを入れてくれた店員さん、何より場所をご提供いただいたkate coffeeさん(雰囲気のよいブックカフェでした!)と多くの人の力により今回のインタビューは無事に始まり、無事に終わったのである。私一人では到底できないことである。内容に関しては先述したとおり5月に流通する『文芸ラジオ』2号を楽しみにしてほしい。本好きの人と本について話をするのは非常に楽しいひと時であったことはここで述べておこう。
そして2日連続で学科ブログを更新してしまったので、そろそろ仕事と原稿に戻らないと怒られそうである。何もできなくても、そのぐらいはできないといけない。
BGM:鬼束ちひろ「流星群」